眼科コラム

白内障手術の流れ、術前検査から術後3ヶ月までの全体像

目次

白内障手術そのものは、片目あたり10分前後で終わる短い処置です。ただし全体の流れは「術前検査」「手術当日」「術後3ヶ月までの経過観察」の3ステップに分かれており、最初の検査から完了まで約3ヶ月を見ておくと安心です。手術日だけを切り出して理解しても、術前の点眼や術後の生活制限まで見通せないと、自分のケースで何をいつ準備すればよいかが見えにくくなります。

この記事では、術前検査から術後3ヶ月までの全体像を時系列で整理し、その日その日に何が起きるかを把握できるようにご説明します。

白内障手術の前段階|術前検査と手術日までの準備

手術日が決まる前に、まず術前検査を受けます。ここで眼内レンズの度数や手術の方針を決めるため、検査結果は手術全体の出来上がりを左右する大きな要素になります。

術前検査では何を調べるか

術前検査では、眼の状態を多面的に確認します。代表的な検査項目は次のとおりです。

検査項目 何を調べるか
視力検査・屈折検査 現在の見え方と度数
眼圧検査 緑内障など他の病気の有無
眼底検査 網膜・視神経の状態
角膜内皮細胞検査 角膜の細胞数(手術の安全性に関わる)
眼軸長検査 眼の長さ(眼内レンズの度数決定に必須)
角膜形状解析 角膜のカーブ・乱視

眼軸長と角膜カーブの測定値が、挿入する眼内レンズの度数を決める基礎データになります。データの精度が手術後の見え方に直結するため、この検査の段階で「自分はどんな見え方を希望するか(遠くを裸眼で見たいか、手元を裸眼で見たいか等)」を担当医に伝えておくことが、後悔のない眼内レンズ選びにつながります。

検査の所要時間は項目数や瞳孔を広げる薬の有無により幅がありますが、半日程度かかるケースが多くなっています。瞳孔を広げる薬を使うと数時間まぶしさが残るため、自分で運転して帰る予定は立てないほうが安全です。

眼内レンズを決める

白内障手術では、濁った水晶体を取り除いて代わりに眼内レンズを挿入します。このレンズの種類と度数を術前検査の段階で決めます。

眼内レンズには大きく2種類あります。1つの距離にピントが合う「単焦点眼内レンズ」と、複数の距離にピントが合う「多焦点眼内レンズ」です。単焦点レンズは公的医療保険が適用され、多焦点レンズは選定療養または自由診療となります。

レンズの種類 特徴
単焦点
  • 1つの距離(遠く・中間・近くのいずれか1つ)にピントが合う
  • 保険適用
多焦点
  • 複数距離にピントが合う
  • メガネ依存度を下げやすい
  • 選定療養または自由診療

単焦点を選ぶ場合は「遠くを裸眼で見えるようにする」「手元を裸眼で見えるようにする」のどちらかを事前に決める必要があります。ピントが合わない距離はメガネで補うことが前提になります。多焦点を選ぶ場合も、製品ごとに見え方の特性(夜間のにじみ・コントラストの感じ方)が違うため、生活で何を優先したいかを担当医と擦り合わせます。

両目を手術する場合の進め方

両目とも白内障が進行している場合は、左右別々の日に手術を行うのが一般的です。同日に両目を手術しないのは、片目ずつ術後の状態を確認しながら次の目に進むほうが安全であるためです。

両目の手術間隔はクリニックや状態によって異なりますが、1週間〜1ヶ月程度の間隔をあけて2回目の手術を行うケースが多くなっています。1回目の手術後の見え方や眼内レンズの度数の出方を踏まえて、2回目の手術計画を微調整できる利点もあります。手術と手術の間の期間は、片目だけ見え方が変わる状態になるため、見え方の左右差や日常生活への影響を担当医と確認しながら進めます。

手術日までに準備すること

術前検査と手術の間には数日〜数週間の期間があります。この間に、医師の指示に従って次の準備を進めます。

  • 内服薬(特に血液をサラサラにする薬)について担当医・主治医と調整
  • 手術当日の付き添いや帰宅手段の確認
  • 抗菌点眼薬の開始(多くの場合、手術の3日前頃から)
  • 当日着用する服装の確認(前開きの服が望ましい)

血液をサラサラにする薬を内服している方は、自己判断で中止せず、必ず処方元の主治医と眼科担当医の双方の指示を仰ぎます。薬を続けたまま手術するか、一時的に休薬するかは、全身の病気の状態と手術の方法を踏まえて医師が判断する事項であり、自己判断で止めると別のリスクが発生します。

白内障手術当日の流れ|来院から帰宅まで

手術当日は、来院から帰宅までおおよそ2〜3時間の流れになります。手術自体は短いものの、前後の準備と休憩の時間を含むと、半日程度の予定として考えておくと安心です。

来院から手術室入室までにすること

来院後は、まず受付と血圧測定、体調確認を行います。その後、手術室へ入る準備として複数回の点眼を行います。

  • 散瞳剤(瞳孔を広げる目薬)の点眼を時間を空けて数回
  • 抗菌点眼薬と消炎点眼薬の追加
  • 手術着への着替え
  • 顔まわりの消毒

散瞳剤は手術中に水晶体や眼内をしっかり見えるようにするために必要です。十分に瞳孔が開くまで時間がかかるため、手術予定時刻の1〜2時間前に来院するスケジュールが一般的です。来院から手術室入室まではおおよそ60〜90分が目安となります。

朝食や常用薬は、医師から特別な指示がない限り通常通りで構わない場合が多いものの、医院によって指示が異なるため、必ず事前に確認します。コンタクトレンズを使用している方は、術前検査の段階から装用中止の指示が出ることがあります。

手術中に何をしているか

手術は局所麻酔(点眼麻酔)で行うのが基本です。注射の麻酔ではないため、目薬を数回点眼することで眼の表面と眼内の感覚を鈍らせます。意識はあり、医師の声も聞こえますが、痛みはほとんど感じません。なお当院では、ご希望に応じて吸入式の笑気麻酔も併用でき、緊張や不安を和らげながらリラックスして手術を受けていただけます。

手術の手順は、おおむね次の流れで進みます。

  • 眼の周囲とまぶたを消毒し、清潔なドレープで覆う
  • まばたきしないよう開瞼器(かいけんき)でまぶたを開く
  • 角膜の端にごく小さな切開を作る
  • 水晶体を包んでいる前嚢(ぜんのう)に円形の窓を開ける
  • 超音波の機械で濁った水晶体を細かく砕いて吸引する
  • 残った水晶体嚢の中に眼内レンズを挿入する
  • 切開部を確認し、必要に応じて閉鎖する

切開幅は2mm前後と非常に小さく、多くの場合は縫合不要で自然に閉じます。この切開幅の小ささが、日帰り手術と早い社会復帰を可能にしている技術的な背景です。

手術中は「眼を動かさないこと」「強くまばたきしようとしないこと」「咳や深呼吸は声をかけてから」が患者様側に求められる協力ポイントです。痛みではなく「水で眼を洗っているような感覚」「光がまぶしく感じる」と表現する方が多くなっています。

手術直後から帰宅までの過ごし方

手術が終わると、術眼に眼帯をしてリカバリールームで30分〜1時間ほど休憩します。この休憩中に血圧の安定や体調の確認を行います。

  • 手術直後は眼帯を装着(医院によって翌日まで継続)
  • 休憩時間中に最終的な点眼指導と帰宅後の注意説明
  • 当日の点眼スケジュールと翌日の受診時刻の確認
  • 体調に問題がなければ帰宅

帰宅は、付き添いの方と一緒、もしくは公共交通機関やタクシーが原則です。手術当日に自分で車・バイク・自転車を運転して帰ることは禁止です。眼帯と散瞳剤の影響で、片目の視野が遮られ、もう片目もまぶしさが残った状態になっています。

帰宅後は、当日中は安静に過ごします。眼帯はそのままで、自宅では指示された点眼を時間どおりに行います。当日の入浴・洗顔は控え、首から下のシャワーまでに留めるのが一般的な指示です。

白内障手術後の流れ|翌日から1ヶ月までの経過

術後は、視力の回復と眼の状態の安定を確認しながら、少しずつ生活制限を解除していく時期です。「いつから何ができるか」は時期によって変わります。

翌日〜1週間|まずは感染予防を最優先

手術翌日は必ず受診します。眼帯を外し、視力検査と診察を行い、感染や炎症の兆候がないかを確認します。多くの場合、この時点で日中の眼帯は外れ、夜間のみ保護用ゴーグルを装着する形に切り替わります。

感染予防として術後1週間程度の保護ゴーグル装着を推奨しています。手術直後の傷口は完全には閉じておらず、目を強くこすったり、汗・水・髪の毛が眼に入ったりすると感染のリスクが上がるためです。

この時期に意識する生活上のポイントは次のとおりです。

  • 目をこすらない(無意識のこすりを防ぐため就寝時にゴーグル)
  • 洗顔・洗髪は1週間程度控える(顔は固く絞ったタオルで拭く)
  • 浴槽への入浴は1週間程度控え、首から下のシャワーで済ませる
  • 重い荷物の運搬や激しい運動は控える
  • 処方された点眼薬を時間どおりに使用する

術後3〜7日の間に「急に見にくくなる」「強い痛み」「ひどい充血」が出た場合は、細菌性眼内炎の可能性があるため、すぐに手術を受けた医療機関を受診してください。眼内炎はまれですが、放置すると視力に大きな影響を残すため、迷ったら連絡することが原則です。

1週間〜1ヶ月|日常生活を取り戻していく時期

1週間程度経過すると、洗顔・洗髪・運転など、控えていた多くのことが再開できるようになります。再開の可否は必ず1週間後の受診で医師に確認したうえで判断します。

活動 再開の目安
デスクワーク・読書・テレビ 翌日から可能なことが多い
洗顔・洗髪 1週間後の受診で確認後
運転 術後1週間程度(医師の許可後)
化粧(目元以外) 術後数日~1週間
目元の化粧 1ヶ月程度控える
軽い運動・散歩 翌日から可能
汗をかく運動 1週間程度控える
水泳・サウナ 1ヶ月程度控える

運転再開は「視力検査の数値」だけでなく「見え方の安定感」と医師の許可で判断します。術後早期は遠近のピント調整に慣れていないため、数値上は視力が出ていても、実際の運転には不安が残るケースがあります。無理せず、見え方が安定してから始めるのが安全です。

点眼は1ヶ月時点でもまだ続いているのが一般的です。感染予防の点眼は術後早期に終了し、炎症を抑える点眼は2〜3ヶ月程度続きます。残った点眼薬の本数を受診時に共有し、追加処方の必要があるかを確認します。

まとめ

白内障手術は、当日10分前後の処置でありながら、術前検査から術後3ヶ月までの流れ全体を見通しておくことで、自分のケースで何をいつ準備すればよいかが見えてきます。特に重要なのは次の3点です。

  • 術前検査の段階で眼内レンズの種類と度数を決めるため、希望する見え方を担当医に伝える
  • 手術当日は来院から帰宅まで2〜3時間。運転は禁止のため帰宅手段を準備する
  • 術後1週間は感染予防、1ヶ月で多くの生活制限が解除、3ヶ月で見え方が安定する%が基準)

武田眼科では、地域の患者様お一人おひとりにわかりやすい言葉で手術の流れをご説明し、ご希望に合った眼内レンズの選択から術後のフォローアップまで、安心して手術を受けていただける環境を整えています。白内障手術をご検討中の方や、すでに手術を勧められて不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

武田眼科
院長 武田俊彦

地域の皆さんの少しでもお役に立てるよう努力します。
患者さまの目線で病気を見つめ、わかりやすい言葉でご説明することを大切にしています。

■ 経歴

  • 平成14年4月:関西医科大学眼科 入局
  • 平成15年5月:日本赤十字社和歌山医療センター眼科 勤務
  • 平成17年10月:関西医科大学滝井病院眼科 勤務
  • 平成18年4月:関西医科大学滝井病院救命救急センター 勤務
  • 平成19年8月:医療法人慈眼会 武田眼科 院長就任
  • 平成19年9月〜12月:天理よろづ相談所病院 非常勤医師

■ 資格・認定

  • 眼科専門医

【白内障手術および多焦点眼内レンズに関する重要事項】

白内障手術自体は健康保険が適用されますが、多焦点眼内レンズを選択する場合の追加部分は自由診療または選定療養の対象となり、保険診療と自費が併用されます。

  • 治療内容:濁った水晶体を超音波で取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術。単焦点眼内レンズは保険適用、多焦点眼内レンズは選定療養または自由診療
  • 治療期間・回数:両眼で2回(片眼ずつ実施)。所要時間は片眼10〜20分程度(個人差あり)
  • 費用の目安:単焦点眼内レンズによる手術は健康保険適用。多焦点眼内レンズを選択した場合は別途追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
  • リスク・副作用:感染症、後発白内障、眼内炎、術後の見え方の違和感、ハロー・グレアなど