眼科コラム

白内障手術の費用はいくらかかる?
保険・選定療養・自費の3つの目安

目次

白内障手術の費用は、片眼で1万円台に収まるケースから、両眼で100万円を超えるケースまで幅があります。この差を生んでいるのは「どのレンズを選び、どの保険制度の枠組みで受けるか」という1点です。ご自身のケースで実際にいくら払うかは、保険診療・選定療養・自由診療のどれに当てはまるかを最初に整理すると見えてきます。

白内障手術の費用は3つのパターンで決まる

白内障手術は、濁った水晶体を取り除き、人工の眼内レンズに置き換える手術です。費用は、この眼内レンズに何を選ぶかで「保険診療」「選定療養」「自由診療」のいずれかに振り分けられる仕組みになっています。

  • 保険診療:単焦点眼内レンズを使う通常の白内障手術
  • 選定療養:国内承認の多焦点眼内レンズを使う手術。レンズ代だけ自費、手術代は保険適用
  • 自由診療:国内未承認の多焦点眼内レンズなどを使う手術。すべて自費

選定療養は、保険診療と自費の併用を厚生労働省が公式に認めた仕組みで、多焦点眼内レンズを使った白内障手術は2020年4月から選定療養の対象になっています。それまでは「先進医療」または「自由診療」のどちらかでしたが、現在はレンズ代以外の手術費・診察費・薬代に保険が使えるようになり、患者様の負担は以前より下がりました。

なお、この記事の数字はすべて「片眼あたり」の目安です。両眼を手術する場合は基本的に2倍で考えます。

参考:日本眼科学会多焦点眼内レンズに係る選定療養の運用について

「保険診療」で受ける白内障手術の費用

最も一般的な白内障手術は、単焦点眼内レンズを使う保険診療です。費用の目安と、その金額がどう決まっているかを順に説明します。

自己負担額の目安

保険診療の白内障手術は、診療報酬点数で全国一律の総額が決まっています。患者様が窓口で支払うのは、その総額に自己負担割合(1割・2割・3割)をかけた金額です。

自己負担割合 片眼の費用目安
1割(後期高齢者など) 約1万5,000円
2割(70~74歳の一般所得など) 約3万円
3割(70歳未満・現役並みの所得) 約4万5,000円

※上記は「その他の眼内レンズ挿入」12,100点(121,000円)を基準にした目安です。眼内レンズ縫着など術式によって診療報酬点数と自己負担額は変わります。

単焦点眼内レンズによる白内障手術は、レンズ代も診療報酬の中にすでに含まれています。「レンズ代を別途請求されるのでは」と心配される方がいますが、保険診療の範囲内であれば追加のレンズ代は発生しません。

手術費用以外にかかる項目

白内障手術の総額を考えるとき、手術当日の支払いだけを見ていると見落としが出ます。実際には次の項目を合算する必要があります。

  • 術前検査(視力検査・眼圧・OCT・角膜形状解析など)
  • 手術当日の費用(手術代+眼内レンズ代)
  • 術後の点眼薬(抗菌薬・抗炎症薬を1〜2ヶ月程度)
  • 術後の経過観察通院(数回)

これらを合わせると、片眼の保険診療でも最終的な総額は手術当日の支払額より数千円〜1万円程度上乗せされるのが一般的です。具体的な金額はクリニックや使用する点眼薬によって異なるため、術前カウンセリングで総額の目安を確認しておくと安心です。

参考:医科診療報酬点数表 K282 水晶体再建術

「選定療養」で多焦点眼内レンズを選ぶ場合の費用

「老眼鏡をかける生活を減らしたい」「遠くも近くもなるべく裸眼で見えるようにしたい」という希望がある方は、選定療養の対象になっている多焦点眼内レンズを検討することになります。

「保険適用部分」と「レンズ代」を分けて考える

選定療養では、白内障手術そのものに保険が適用され、患者様は保険診療の自己負担額を窓口で支払います。これに加えて、「保険適用の単焦点レンズより高機能なレンズを選ぶ」差額として、レンズ代を全額自費で負担する仕組みです。

つまり、選定療養での実際の支払い総額は、「保険診療の自己負担額(数千円〜4万5,000円程度)+ レンズ代(クリニックが定める自費)」となります。

レンズ代の幅は片眼20〜40万円台が一般的ですが、レンズの種類とクリニックの料金設定によって異なります。

レンズの種類による費用の違い

選定療養の対象になる多焦点眼内レンズには、見える距離数の違いから2焦点(遠・近)と3焦点(遠・中・近)があり、さらに乱視矯正機能の有無によって料金が変わります。

レンズの種類 主な特徴 自費部分の目安(片眼)
2焦点レンズ 遠くと近くにピントが合う 20万円台~30万円台
3焦点・連続焦点レンズ 遠・中・近の全域でピントが合う 30万円台~40万円台
乱視矯正付きレンズ 上記に乱視矯正機能を追加 上記+数万円程度

※上記はあくまで目安です。実際の料金はクリニックごとに設定されているため、選定療養を受ける前にレンズ代と保険適用部分の総額を必ず確認してください。

選定療養を受けるときの注意点

選定療養を受けるには、その医療機関が選定療養の届出を行っていることが前提です。届出をしていないクリニックでは、同じレンズを使っても全額自由診療扱いになり、費用が大きく跳ね上がります。多焦点眼内レンズに興味がある場合は、最初の問い合わせで「選定療養の届出はあるか」「使用しているレンズは選定療養の対象か」を確認しておきましょう。

また選定療養では、レンズ代部分には高額療養費制度・医療費控除が原則として適用されません。保険適用となる手術費部分のみが対象になります。

「自由診療」で多焦点眼内レンズを選ぶ場合の費用

選定療養の対象になっていない多焦点眼内レンズを選ぶ場合、手術全体が自由診療となります。

自由診療になる主なケース

自由診療になるのは次のようなケースです。

  • 国内未承認の多焦点眼内レンズを使用する
  • 選定療養の届出をしていない医療機関で多焦点眼内レンズを使う

国内未承認のレンズには、海外で先行承認されている新しい設計のレンズや、特殊な機能を持つレンズが含まれます。
レンズの選択肢は広がりますが、その分、費用と承認情報の確認が必要になります。

費用の目安と保険制度との関係

自由診療では、手術代・レンズ代・術前検査・術後通院・薬代のすべてが自費になります。
総額の目安は片眼60〜90万円程度ですが、レンズの種類とクリニックによって幅があります。

自由診療の手術費用は、医療費控除の対象になります。一方、高額療養費制度は保険適用の医療費が対象なので、自由診療には使えません。この違いは、後の章で具体的な計算を交えて整理します。

高額療養費制度で当日の支払いを抑える方法

保険診療・選定療養のどちらでも、白内障手術で保険適用となった部分は高額療養費制度の対象になります。所得や年齢によって、ひと月の自己負担に上限が設けられている制度です。

【2026年8月の制度改正にご注意ください】
2026年8月1日より、高額療養費の自己負担限度額が段階的に見直されます。70歳未満の区分ウは「85,800円+(医療費-286,000円)×1%」、70歳以上の一般区分の外来上限は22,000円へ引き上げられる予定です。
以下の表は2026年7月までの基準額です。2026年8月以降に手術を受けられる方は、最新の限度額をご加入の健康保険者または医療機関の窓口でご確認ください。

70歳未満の自己負担限度額

70歳未満の方は、加入している健康保険の標準報酬月額(おおまかな月収)によって、5つの所得区分に分かれます。

区分(標準報酬月額) ひと月の自己負担限度額
区分ア(83万円以上) 252,600円 + (医療費 - 842,000円) × 1%
区分イ(53~79万円) 167,400円 + (医療費 - 558,000円) × 1%
区分ウ(28~50万円) 80,100円 + (医療費 - 267,000円) × 1%
区分エ(26万円以下) 57,600円
区分オ(住民税非課税) 35,400円

例えば、区分ウ(標準報酬月額28〜50万円、年収目安約370〜770万円)の方が片眼の白内障手術を保険診療で受けた場合、3割負担で約4万5,000円なので、限度額(80,100円)を下回りそのまま支払うことになります。一方、両眼を同月内に手術した場合は約9万円となり、区分ウの限度額を超えた分は後日払い戻されます。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)高額療養費の自己負担限度額

70歳以上の自己負担限度額

70歳以上の方は、上限がさらに低く設定されているため、白内障手術ではこの制度の恩恵が大きくなります。

区分(標準報酬月額) 外来(個人) 外来 + 入院(世帯)
現役並み所得Ⅲ
(標準報酬月額83万円以上)
-(世帯のみ) 252,600円 +
(医療費 - 842,000円) × 1%
現役並み所得Ⅱ
(標準報酬月額53~79万円以上)
-(世帯のみ) 167,400円 +
(医療費 - 558,000円) × 1%
現役並みの所得Ⅰ
(標準報酬月額28~50万円以上)
-(世帯のみ) 80,100円 +
(医療費 - 267,400円) × 1%
一般 18,000円 57,600円
低所得者Ⅱ
(住民税非課税)
8,000円 24,600円
低所得者Ⅰ
(住民税非課税かつ所得が一定以下)
8,000円 15,000円

「一般」区分の70歳以上の方は、ひと月にどれだけ眼科の外来通院を重ねても自己負担は18,000円までで済みます。両眼の白内障手術を同月にまとめて受けた場合でも、この上限がそのまま適用されます。さらに「一般」「低所得」区分の方は、外来の自己負担額が年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)で14万4千円を超えた場合、超過分も払い戻される仕組みがあります。

限度額適用認定証で「全額立替」を防ぐ

高額療養費制度は、原則として一度窓口で支払ってから後日払い戻される仕組みです。これを最初から限度額までしか請求されない形に変えるのが「限度額適用認定証」です。

加入している健康保険組合(または市区町村)に申請して認定証を発行してもらい、手術前にクリニックの窓口に提示します。これで手術当日の支払いは限度額の範囲内に収まり、いったん高額を立て替える必要がなくなります。70歳以上の方は健康保険証または高齢受給者証で代用できる場合があるので、加入先に確認します。

医療費控除で確定申告後に戻ってくる金額

医療費控除は、1年間(1月〜12月)に支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分を所得から差し引いて税金を再計算する制度です。

控除額の計算式と2つの基準

医療費控除の対象になる金額は、次の式で計算されます。

1年間の医療費-保険などで補填された金額-(10万円または総所得金額等の5%)

最後の差し引き額には2つの基準があり、総所得金額等が200万円以上の方は10万円、200万円未満の方は総所得金額等の5%が適用されます。後者は「5%ルール」と呼ばれ、年金生活の高齢の方やパートタイムの方が10万円のラインに届かなくても控除を受けられる仕組みです。

参考:国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)

計算例:年収500万円の方が片眼の選定療養を受けた場合

具体的な金額がイメージしにくいので、典型的なケースで計算してみます。

【前提条件】

  • 給与年収500万円(給与所得控除後の所得が約356万円、各種控除を引いた課税所得を約230万円と想定。所得税率10%・住民税率10%適用)
  • 総所得金額等は200万円以上のため、差し引き額は10万円
  • 選定療養で片眼の白内障手術。保険診療部分の自己負担45,000円+レンズ代33万円=合計37万5,000円
  • 他の医療費は年間で考慮しない

【計算】

  • 医療費控除の対象額:375,000円-100,000円=275,000円
  • 所得税の還付:275,000円×10%=27,500円
  • 住民税の軽減:275,000円×10%=27,500円(翌年度の住民税から軽減)
  • 所得税の還付(約27,500円)と翌年度住民税の軽減(約27,500円)を合わせると、合計約55,000円が戻ってくる/軽減される計算になります。

※上記は所得税率10%帯の方を想定した試算です。実際の還付額は他の所得控除や課税所得により変動するため、確定申告書等作成コーナーや国税庁の医療費控除シミュレーターで個別に検算します。所得税率は年収だけでは決まらないため、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を差し引いた金額(=課税所得金額)、または住民税決定通知書の課税標準額を確認すると正確に判断できます。

参考:国税庁確定申告書等作成コーナー

高額療養費との合算と注意点

高額療養費制度ですでに払い戻された金額は、医療費控除の対象から差し引きます。「高額療養費で戻ってきた分は医療費を払ったことにならない」という考え方です。

また、選定療養のレンズ代も医療費控除の対象になります。これは治療目的で支払った医療費に該当するため、自費部分であっても控除に算入できるという整理です。一方、自由診療の白内障手術費用も同様に対象となりますが、領収書には「治療目的である」ことを明記してもらうと申告がスムーズです。

両眼を手術する場合の費用の考え方

両眼に白内障がある方は、片眼ずつ手術するのが一般的です。両眼の費用は単純に2倍ではなく、手術のタイミング次第で高額療養費の上限を活用できるかどうかが変わります。

同じ月にまとめるか、月をまたぐか

70歳以上の「一般」区分の方が両眼を手術するケースで、月のまとめ方による違いを比較してみます。

手術のタイミング 高額療養費の自己負担合計
同じ月に両眼手術 18,000円(外来上限)または57,600円(外来+入院世帯)
月をまたいで片眼ずつ 各月で上限が適用されるため、合計で2倍に近づく

同じ月に両眼を手術すれば、ひと月の上限がそのまま適用されるため、月をまたぐより自己負担を抑えられます。一方で、ご本人の体力や術後の見え方の調整を考えると、片眼ずつ間隔をあけて手術するほうが望ましいケースもあります。費用と安全性のバランスは、診察結果に応じて主治医と相談して決めます。

両眼で別々のレンズを選ぶ選択肢

両眼に違う度数のレンズを入れる「モノビジョン」や、利き目に多焦点・反対側に単焦点というように左右で異なるレンズを組み合わせる方法もあります。費用面では、片眼だけ選定療養や自由診療のレンズを選ぶことも可能で、両眼分まとめて多焦点を選ぶケースより総額を抑えられる場合があります。ただし両眼の見え方のバランスは個人差が大きいため、適応の判断は術前検査と医師の説明をもとに決めることになります。

白内障手術の費用に関するよくある質問

白内障手術で生命保険の手術給付金は出ますか?

多くの医療保険・生命保険で、白内障手術(K282 水晶体再建術)は手術給付金の支給対象になっています。ただし、支給額や日帰り手術の扱い、選定療養・自由診療部分が対象になるかは保険商品ごとに異なります。手術前に保険会社へ「白内障手術(K282)が対象か」「日帰り手術での給付額」「自費部分の取り扱い」を確認しておきます。

入院手術と日帰り手術で費用に違いはありますか?

日帰り手術と入院手術では、入院基本料・食事代の有無が違います。日帰りなら入院費がかからないぶん総額は下がります。一方で術後の見守りや遠方からの通院負担を考えて入院を選ぶ方もいるので、ご自身の生活状況とクリニックの体制で判断します。

白内障手術にローンや分割払いは使えますか?

保険診療の手術費用は金額が比較的小さいため、現金または医療費の窓口決済で対応するのが一般的です。選定療養のレンズ代や自由診療の手術費用については、クリニックによってクレジットカード払いや医療ローンに対応している場合があります。料金相談の際に支払い方法を確認します。

まとめ

白内障手術の費用は、選ぶ眼内レンズと適用される保険制度によって、片眼1万5,000円から両眼で100万円超まで大きく開きます。ご自身のケースで実際にいくら払うかを把握するには、次の3点を順に確認するのが近道です。

  • 単焦点(保険)/多焦点・選定療養/多焦点・自由診療のどれに該当するか
  • 高額療養費制度の自己負担限度額(年齢と所得区分で決まる)
  • 医療費控除でいくら戻るか(10万円または総所得金額等の5%が基準)

費用は決して安い金額ではありませんが、制度を組み合わせれば実質的な負担はかなり抑えられます。具体的な金額はクリニックが使用するレンズと患者様の保険条件で変わるため、術前カウンセリングで総額の見積もりと活用できる制度を確認しておくのが安心です。

武田眼科では、保険診療の単焦点レンズから選定療養の多焦点眼内レンズまで、患者様お一人おひとりのライフスタイルとご予算に合わせた治療プランをご提案します。すべて日帰り手術に対応しており、入院による費用や生活面の負担なく、その日のうちにご帰宅いただけます。白内障の手術費用や治療法でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

武田眼科
院長 武田俊彦

地域の皆さんの少しでもお役に立てるよう努力します。
患者さまの目線で病気を見つめ、わかりやすい言葉でご説明することを大切にしています。

■ 経歴

  • 平成14年4月:関西医科大学眼科 入局
  • 平成15年5月:日本赤十字社和歌山医療センター眼科 勤務
  • 平成17年10月:関西医科大学滝井病院眼科 勤務
  • 平成18年4月:関西医科大学滝井病院救命救急センター 勤務
  • 平成19年8月:医療法人慈眼会 武田眼科 院長就任
  • 平成19年9月〜12月:天理よろづ相談所病院 非常勤医師

■ 資格・認定

  • 眼科専門医

【白内障手術および多焦点眼内レンズに関する重要事項】

白内障手術自体は健康保険が適用されますが、多焦点眼内レンズを選択する場合の追加部分は自由診療または選定療養の対象となり、保険診療と自費が併用されます。

  • 治療内容:濁った水晶体を超音波で取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術。単焦点眼内レンズは保険適用、多焦点眼内レンズは選定療養または自由診療
  • 治療期間・回数:両眼で2回(片眼ずつ実施)。所要時間は片眼10〜20分程度(個人差あり)
  • 費用の目安:単焦点眼内レンズによる手術は健康保険適用。多焦点眼内レンズを選択した場合は別途追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
  • リスク・副作用:感染症、後発白内障、眼内炎、術後の見え方の違和感、ハロー・グレアなど