白内障と緑内障の違い。症状の見分け方と併発したときの治療法

目次
白内障と緑内障は名前が似ているため同じ系統の病気と思われやすいですが、目のなかで起きていることはまったく別です。
白内障はカメラのレンズにあたる水晶体が濁る病気、緑内障は撮影フィルムにあたる視神経が傷んでいく病気で、見え方の変化も、治療で目指せるゴールも大きく違います。両者は加齢とともにどちらも増えるため同じ目に併発することもあり、片方の検査で初めてもう片方が見つかる方も少なくありません。
違いの整理と、症状で気づく手がかり、併発したときの考え方まで順にご説明します。
白内障と緑内障は名前が似ているが全く別の病気
「白」と「緑」で対の病気のように感じられますが、目のどの組織が傷んでいるか、視覚にどう影響するかが根本的に違います。まずはこの構造の違いを押さえておくと、後の症状や治療の話が整理して理解できます。
白内障は「水晶体(レンズ)の濁り」
白内障は、目のなかでカメラのレンズの役割を果たしている水晶体が白く濁ることで起きる病気です。
水晶体はクリスタリンというたんぱく質でできており、本来は無色透明ですが、加齢や紫外線、糖尿病などの影響でたんぱく質が変性し、少しずつ濁っていきます。
白内障で問題が起きているのは「光を取り込む側」のレンズで、視神経そのものは無事です。
そのため濁った水晶体を取り除いて人工の眼内レンズに入れ替えれば、見え方を取り戻せる余地が大きく残されています。曇ったレンズを磨くのではなく、レンズごと入れ替えるイメージに近いものです。
緑内障は「視神経のダメージ」
緑内障は、目から脳へ情報を送る視神経が少しずつ傷んでいく病気です。
傷み方には複数の要因が関わりますが、代表的なのは眼圧(眼のなかの圧力)の影響で視神経が圧迫を受けるパターンです。視神経は約100万本の神経線維(網膜神経節細胞の軸索)の束でできており、その線維が脱落していくと、対応する範囲の視野が抜け落ちていきます。
視神経はいったん傷んでしまうと再生しません。
緑内障の治療で目指せるのは「進行を止める・遅らせる」ところまでで、すでに失われた視野を元に戻す方法は現時点ではありません。この点が白内障との最大の違いです。
白内障と緑内障の症状の違いはどこに出るか
両者は「見えにくさ」という共通点を持ちながら、見え方の質はまったく違います。
違いを意識して自分の見え方を観察すると、どちらの可能性が高いかの見当をつけやすくなります。
白内障の症状:かすみ・まぶしさ・二重に見える
白内障では、視野全体に薄い膜がかかったような「かすみ」が出ます。新聞や本の文字がぼやけて見える、テレビの字幕がはっきりしないといった訴えが多く、眼鏡やコンタクトの度を変えても改善しないのが白内障のかすみの特徴です。
水晶体の濁りで光が乱反射するため、晴れた日の屋外や夜間の対向車のヘッドライトが極端にまぶしく感じられます。
片目をつぶって見たときに物が二重・三重に見える「単眼複視」が現れることもあり、これは老眼や乱視の進行と区別しにくい初期サインの1つです。
緑内障の症状:視野の一部が欠ける・気づきにくい
緑内障で起きるのは「視野欠損」、つまり見えている範囲のなかで一部が抜け落ちる変化です。
多くの場合、抜けるのは中心ではなく中心の少し外側で、両目で見ているうちは反対側の目が補ってしまうため自覚しにくい性質があります。
視野が欠けても「真っ黒な穴」として見えるわけではなく、抜けた部分は脳が周りの情報で埋めてしまうため、自分では気づかないまま進行することが多い病気です。
階段を踏み外しやすくなった、運転中に車線変更が怖くなった、ボールが急に視野に入ってくる感覚がある、といった生活上の違和感で初めて気づく方もいます。
なお、急に眼圧が上がる「急性緑内障発作」は例外で、激しい目の痛み・頭痛・吐き気・霧視(霧のなかにいるような見え方)が一気に現れます。
これは緊急で治療が必要な状態で、放置すれば短時間で視機能が大きく損なわれる可能性があります。
白内障と緑内障の原因とリスクが高まる条件
両疾患はどちらも加齢が大きな要因ですが、リスクを高める背景は少し異なります。
共通する要因と、片方だけに関係する要因を分けて押さえておくと、自分が注意すべき点が明確になります。
どちらにも共通する加齢の影響
白内障も緑内障も、年齢とともに有病率が上がります。日本緑内障学会の多治見スタディ(2000〜2001年に岐阜県多治見市で行われた疫学調査)によると、緑内障の有病率は40歳代で2.2%、50歳代で2.9%、60歳代で6.3%、70歳代で10.5%、80歳以上で11.4%です。
白内障については、日本眼科学会の解説で60歳代で約70%、70歳代で90%、80歳代ではほとんどの方に白内障の所見が認められると示されています。加齢が病気の中心的な引き金になる点は緑内障と共通しています。
参考:日本緑内障学会-多治見スタディ
参考:白内障(日本眼科学会)
白内障のリスクを高める要因
加齢以外で白内障を早める要因として、紫外線・喫煙・糖尿病・ステロイド薬の長期使用が代表的です。
屋外で過ごす時間が長い職業の方は紫外線によって水晶体周辺が濁る皮質白内障が早めに現れることがあり、糖尿病のある方は血糖の影響で水晶体に濁りが出やすくなります。
ステロイド薬(点眼・内服・吸入を含む)を長期にわたり使っている方は、加齢性のものに比べて進行の速い後嚢下白内障(こうのうかはくないしょう)を起こすことがあります。
アトピー性皮膚炎・喘息・自己免疫疾患などで治療を続けている方は、自己判断で薬を中止せず、眼科の定期検査と組み合わせて経過を見ていくことが現実的な対応になります。
緑内障のリスクを高める要因
緑内障では加齢に加え、家族歴(血縁者に緑内障の方がいる)、強い近視、糖尿病、長期のステロイド使用がリスクを高めます。日本人の緑内障では、眼圧が正常範囲内にあるのに視神経が傷む「正常眼圧緑内障」が多くを占めるのが特徴で、健康診断で眼圧が正常と判定されていても緑内障を否定できない理由になっています。
強い近視の方は眼球の形が前後に伸びており、視神経の入り口が引き伸ばされるため、緑内障による視野欠損が進みやすい傾向があります。
近視が強い方ほど、年に1回程度の眼科検診で視神経と視野の状態を確認しておく意味が大きくなります。
白内障と緑内障は併発することがある
両疾患は加齢とともに増えるため、同じ目に両方が起きていることは珍しくありません。
「白内障の手術前検査で緑内障が見つかる」「緑内障の経過観察中に白内障が進む」といった経過は、診察室でも少なくない組み合わせです。
併発が見つかるパターン
とくに多いのは、白内障で「かすむ」「まぶしい」と感じて受診した方の眼底検査・視野検査で、無症状の緑内障が見つかるパターンです。緑内障は本人が気づきにくいため、別の主訴で来院した機会がそのまま発見の入り口になります。
逆に、緑内障で長期通院中の方の水晶体が年齢とともに濁ってきて、視力低下の主な原因が緑内障から白内障に切り替わるケースもあります。
視野は安定しているのに見え方が悪くなってきた場合、白内障の進行を疑って水晶体の状態を確認します。
白内障が緑内障を引き起こすパターン
水晶体は年齢とともに少しずつ厚みを増します。
眼球のなかで水晶体が前方に押し出されると、目のなかを循環している房水(眼の内圧を保つ液)の出口が狭くなり、眼圧が急に上がる「閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかりょくないしょう)」を起こすことがあります。
このタイプでは、進んだ白内障が緑内障の引き金になっているため、白内障手術で水晶体を薄い眼内レンズに置き換えるだけで眼圧が下がり、緑内障の悪化を防げる場合があります。
白内障の進行と隅角(房水の出口)の狭さが組み合わさっているケースで、検査で隅角の角度を確認したうえで判断します。
同時手術を考えるケース
白内障と緑内障の両方が進んでいる場合、白内障手術と緑内障手術を同じ日に行う選択肢があります。1回の手術で済むため体への負担と通院回数を減らせる利点がありますが、緑内障のタイプ・進行度・眼圧コントロールの状況によって適応が分かれます。
同時手術が向くか、別々に行ったほうがよいかは、眼圧の目標値・視野の進み方・水晶体の濁りの程度を総合的に見て判断します。同じ「同時手術」でも、緑内障側の術式は目の状態に合わせて使い分けるため、検査結果を踏まえた相談が出発点になります。
白内障と緑内障の治療法はどう違うか
ゴールが違えば治療の組み立ても変わります。白内障は「濁ったレンズを入れ替えて見え方を取り戻す」のがゴール、緑内障は「視野の進行を食い止める」のがゴールです。この前提で両者の治療を整理します。
白内障の治療:点眼で進行を遅らせ、進めば手術
白内障の初期では、進行を遅らせる目的で点眼薬を使うことがあります。ただし点眼薬で水晶体の濁りを取り除いたり、すでに変性したたんぱく質を元に戻したりすることはできません。日常生活に支障が出てきた段階で手術を検討するのが標準的な流れです。
手術は、濁った水晶体を超音波で乳化し吸引したうえで、薄い人工の眼内レンズに入れ替えます。日帰りで行えるクリニックも多く、健康保険が適用される単焦点レンズに加え、複数の距離にピントが合う多焦点眼内レンズ(自由診療)を選ぶ選択肢もあります。
緑内障の治療:眼圧を下げて進行を遅らせる
緑内障の治療は、視神経への負担を減らすために眼圧を下げることが基本軸です。
日本緑内障学会の診療ガイドラインでも、眼圧下降が緑内障治療の中心に位置づけられており、薬物・レーザー・手術のいずれもその目的のために選ばれます。
最初に始まるのは点眼薬による眼圧コントロールです。
1種類で目標の眼圧まで下げられない場合は作用機序の異なる点眼薬を組み合わせ、それでも進行する場合にレーザー治療や手術を検討します。手術にも複数の術式があり、目の状態と進行度に合わせて選びます。
治療のゴールの違いを誤解しない
ここで押さえておきたいのは、緑内障の点眼治療は「視野が回復する薬」ではなく「これ以上失わないための薬」だという点です。点眼を始めても見え方が良くなる実感はないため「効いていない」と感じて自己判断で中断される方がいますが、中断すると残っている視野を守る支えが外れてしまいます。
白内障の点眼薬も同じく「進行を遅らせる目的」で、見え方を改善する薬ではありません。両疾患の点眼薬は、症状を取るための薬とは役割が違うものとして理解しておくと、治療を続ける意義が見えやすくなります。
白内障と緑内障を早く見つけるための検査と受診の目安
両疾患とも、自覚症状が出てからではなく、出る前に見つけることに大きな意味があります。白内障は見え方が落ちる前に進行度を把握しておくと手術のタイミングを計画しやすく、緑内障は失った視野が戻らない以上、早期発見が将来の見え方を守る最大の手段になります。
受診を考えたい変化
以下のような変化が出てきたら、年齢にかかわらず一度眼科で確認しておくことをおすすめします。
- 文字や景色が薄い膜越しに見えるかすみ
- 晴れた日の屋外や夜間のヘッドライトが極端にまぶしい
- 片目で見たときに物が二重・三重に見える
- 見ている範囲のどこかが「抜けている」「欠けている」感覚
- 階段を踏み外す、車線変更で怖い思いをすることが増えた
- 強い目の痛み・頭痛・吐き気が突然出た(救急受診を検討)
最後の項目(突然の強い目の痛み・頭痛・吐き気)は急性緑内障発作の可能性があり、夜間や休日でも救急対応を検討してください。それ以外の変化は急ぎではありませんが、放置しても自然に治る種類のものではないため、症状が落ち着くのを待たず受診してください。
40歳を超えたら、症状がなくても一度は両疾患のスクリーニングを受けておくことをおすすめします。
多治見スタディでは40歳以上の緑内障有病率は約5%、つまり40歳以上の20人に1人ほどが緑内障を抱えており、その多くは未診断のまま日常生活を送っています。
家族歴のある方、強い近視のある方、糖尿病のある方、ステロイド薬を長く使っている方は、年に1回の検査を習慣にしておくと変化を早めに把握できます。武田眼科でも、視力検査・眼圧測定に加えて眼底検査・OCT検査を組み合わせ、白内障と緑内障の両方の状態を1回の受診で確認できるようにしています。
眼科で受ける主な検査
両疾患の有無を確認するために、眼科では複数の検査を組み合わせます。
それぞれの検査が何を見ているかを知っておくと、検査結果の説明を受けたときに理解しやすくなります。
| 検査 | 主に何を見るか |
|---|---|
| 視力検査 | 矯正視力でどこまで見えるか |
| 眼圧測定 | 目のなかの圧力(緑内障のリスク評価) |
| 細隙灯顕微鏡検査 | 水晶体の濁りの程度(白内障の評価) |
| 眼底検査 | 視神経の形や色(緑内障の評価) |
| OCT(光干渉断層計) | 視神経線維層の厚み(緑内障の早期発見) |
| 視野検査 | 見えている範囲の欠け方(緑内障の進行評価) |
OCTと視野検査は、自覚症状の出る前の緑内障を見つけるために重要な役割を果たします。
視野検査だけではまだ捉えられない初期段階の視神経の変化を、OCTで線維層の薄さとして捉えられる場合があるためです。
まとめ
白内障と緑内障は名前は似ていますが、目のなかで起きていることはまったく別の病気です。白内障は水晶体の濁りで、手術で見え方を取り戻せる余地が大きく残されているのに対し、緑内障は視神経のダメージで、失った視野は戻らないため早期発見と進行抑制が治療の中心になります。
かすみ・まぶしさが中心なら白内障、視野が欠ける感覚があれば緑内障の可能性を疑うのが大まかな見当のつけ方です。
40歳を超えたら、症状がなくても一度は視神経や視野まで含めて確認する眼科の精密検診を受けておくと、将来の見え方を守る土台になります。
武田眼科では、白内障と緑内障のどちらも一度の受診で確認でき、必要に応じて経過観察から白内障の日帰り手術まで一貫して対応しています。見え方の変化が気になる方、ご家族に緑内障の方がいる方、強い近視や糖尿病で経過観察が必要な方は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
武田眼科
院長 武田俊彦
地域の皆さんの少しでもお役に立てるよう努力します。
患者さまの目線で病気を見つめ、わかりやすい言葉でご説明することを大切にしています。
■ 経歴
- 平成14年4月:関西医科大学眼科 入局
- 平成15年5月:日本赤十字社和歌山医療センター眼科 勤務
- 平成17年10月:関西医科大学滝井病院眼科 勤務
- 平成18年4月:関西医科大学滝井病院救命救急センター 勤務
- 平成19年8月:医療法人慈眼会 武田眼科 院長就任
- 平成19年9月〜12月:天理よろづ相談所病院 非常勤医師
■ 資格・認定
- 眼科専門医
【白内障手術および多焦点眼内レンズに関する重要事項】
白内障手術自体は健康保険が適用されますが、多焦点眼内レンズを選択する場合の追加部分は自由診療または選定療養の対象となり、保険診療と自費が併用されます。
- 治療内容:濁った水晶体を超音波で取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術。単焦点眼内レンズは保険適用、多焦点眼内レンズは選定療養または自由診療
- 治療期間・回数:両眼で2回(片眼ずつ実施)。所要時間は片眼10〜20分程度(個人差あり)
- 費用の目安:単焦点眼内レンズによる手術は健康保険適用。多焦点眼内レンズを選択した場合は別途追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
- リスク・副作用:感染症、後発白内障、眼内炎、術後の見え方の違和感、ハロー・グレアなど

