眼科コラム

白内障の初期症状に気づくサインと、老眼との見分け方

目次

白内障は、水晶体の周りからゆっくり濁りが広がる病気で、初期のうちは中心の透明な部分が残っているため、
ご本人が「見えにくい」と感じにくい時期が長く続きます。
それでも、生活のなかで「最近かすむ」「夜の運転がまぶしい」「眼鏡が合わない」といった違和感が出てきたら、それは初期のサインのことが少なくありません。
早い段階で見つけて点眼薬を始めれば、進行をゆるやかにできるケースもあるため、自分の見え方を一度立ち止まって振り返ることに意味があります。

白内障の初期症状で多いのはどんな見え方か

白内障の初期症状は、はっきりした視力低下の前に、見え方の「質」が変わるかたちで現れます。
生活のどんな場面で気づきやすいかを整理します。

かすみ・もやがかかって見える

最初に出やすいのが、全体に薄い膜が一枚かかったようなかすみです。水晶体が濁り始めると、入ってくる光がまっすぐ網膜に届かず、わずかに散乱します。読書やスマートフォン画面で「文字の輪郭がぼやける」「コントラストが弱く感じる」といった訴えが多く、目をこすっても拭いてもすっきりしません。

涙の不足や結膜炎でもかすみは出ますが、白内障のかすみは点眼や休息でも変わらず、左右で程度に差があることがよくあります。

光がまぶしい、にじんで見える

水晶体の濁りが光を散乱させることで、晴れた日の屋外や夜間の対向車のヘッドライトが以前より強くまぶしく感じるようになります。光源の周りに輪が広がって見える「ハロー」、光が放射状に広がる「グレア」と呼ばれる見え方も、初期から出やすい症状です。特に瞳孔が開く夜間に強く出るため、夜の運転で「以前より対向車がまぶしくて怖い」と感じ始めた方は、白内障を疑う一つの目安になります。

単眼で物が二重に見える

片目で見たときに文字や月が二重・三重に見える「単眼複視」も、初期に現れることがある症状です。
両目で見たときに二重になる複視は脳や神経の異常を疑いますが、片目をふさいでも残る複視は水晶体の濁りで光が分かれてしまうことが原因として考えられます。乱視と紛らわしいですが、片目ずつ交互にふさいで「片方だけ二重に見える」場合は、白内障による単眼複視の可能性が高くなります。

眼鏡やコンタクトの度数が急に合わなくなる

水晶体の濁り方によっては屈折力が変化し、もともとの度数が合わなくなることがあります。
新しく眼鏡を作っても矯正視力が出にくい、作ったばかりなのにすぐ合わなくなる、という変化は、初期の白内障で起こりやすい現象です。眼鏡店で度数を変えるよりも、まず眼科で診察を受け水晶体の状態を確認するほうが、無駄な作り直しを避けられます。

白内障の初期症状は老眼や眼の疲れとどう違うか

40代以降のかすみ・見えにくさは、老眼や眼精疲労、ドライアイとも症状が重なります。
違いを理解しておくと、自分の見え方がどちらに寄っているかを判断しやすくなります。

老眼との違いは「距離」と「光の質」

老眼は水晶体の弾力が落ちてピント調節が遅くなる変化で、主に近くがぼやけ、遠くを見たあと手元に視線を移すと焦点が合うまでに時間がかかります。一方の白内障は水晶体そのものが濁るため、距離に関係なく全体がかすみ、光のまぶしさや色の鈍さも一緒に出ます。「近くだけ見えにくい」なら老眼が中心、「明るい場所で全体がぼんやりする」「夜の光がにじむ」が加わるなら白内障の混在を疑う、という分け方がわかりやすい目安です。

ただし老眼と白内障は同時に進むことがほとんどで、ご自身で片方だけが原因と判断するのは難しいことも事実です。
中高年の方で「老眼鏡が合わなくなった」と感じる場合、その背景に初期の白内障が隠れていることは珍しくありません。

眼精疲労・ドライアイとの違いは「休めば戻るか」

眼精疲労やドライアイによるかすみは、目を休めたり点眼したりすれば一時的に楽になるのが特徴です。
白内障のかすみは水晶体自体の変化が原因のため、どれだけ休んでも回復せず、日に日にではなく数ヶ月〜数年かけて少しずつ強くなります。朝起きた瞬間からかすみがある、眼鏡を拭いても変わらない、という性質があれば、眼の表面ではなく水晶体側の問題を疑う流れになります。

緑内障の初期症状との違い

同じ加齢で増える眼の病気に緑内障があります。
緑内障は視神経が障害される病気で、初期は周辺視野の一部が欠け始めますが、両目で補い合うため自覚しにくいのが特徴です。白内障は「視野は欠けないが全体がかすむ」、緑内障は「視野の一部が欠けるが見える部分はクリア」という違いがあり、両方が同時に進んでいることもあるため、自己判断ではなく眼科での視野検査と眼底検査で切り分ける必要があります。

白内障は水晶体のどこが濁るかで初期症状が変わる

「白内障」とひとまとめにされがちですが、水晶体のどの部分から濁り始めるかによって、初期に出る症状が大きく変わります。混濁の場所によって、核白内障(核硬化)・皮質白内障・後嚢下白内障の3つに分けられます。

種類 濁り始める場所 初期に出やすい症状
皮質白内障 水晶体の周辺(皮質) まぶしさ、光のにじみ。
視力低下は後から
核白内障 水晶体の中心(核) 近視化、近くが見やすくなる時期がある
後嚢下白内障 水晶体の後ろ側の膜の内側 早い段階から強いかすみ。
進行が速い

皮質白内障:まぶしさが先行する

加齢に伴うもので最も多いタイプです。
水晶体の周辺から放射状に濁りが広がり、中心はしばらく透明なままなので、視力検査の数字はあまり下がりません。
代わりに晴れた屋外や夜の対向車のヘッドライトでまぶしさを強く感じるのが特徴で、「視力は出ているのにまぶしくて見づらい」という訴えで気づかれることがよくあります。

核白内障:一時的に「近くが見やすくなる」逆転現象

水晶体の中心が硬く黄色く濁っていくタイプです。
屈折率が変わるため、これまで老眼鏡が必要だった方が「最近、新聞が裸眼で読めるようになった」と感じる「近視化」が起きることがあります。一見すると目が良くなったように思えますが、実際は遠くがぼやけ始めており、進行している合図であることが少なくありません。

「老眼が治った」と感じたら、一度眼科で水晶体の状態を確認することをおすすめします。

後嚢下白内障:進行が速いタイプ

水晶体の一番後ろ側の膜のすぐ内側が濁るタイプで、瞳孔の中心に近い位置に濁りが乗るため、初期から強いかすみと羞明(まぶしさや不快感)が出やすく、進行も比較的速いのが特徴です。
糖尿病やステロイドを長期に使っている方、若年で発症する方に出やすい傾向があり、「数ヶ月単位で見え方が悪くなっている」と感じる場合は、加齢性の白内障とは別に、このタイプを念頭に置いた診察が必要になります。

白内障の初期症状は何歳から出ることがあるか

「まだ60代だから関係ない」と感じる方もいらっしゃいますが、水晶体の変化は思っているより早く始まります。
年齢ごとにどのくらいの割合で白内障が見つかるのかを知っておくと、検診のタイミングを判断しやすくなります。

40代から始まり、年齢とともに増える

加齢性の白内障は早い方では40代から始まり、80代では詳しく検査すれば大部分の方に何らかの濁りが見つかります。
日本眼科学会の解説によると、年齢別の有病率は60歳代で約70%、70歳代で約90%、80歳代ではほとんどの方に白内障が見つかるという数字です。
多くの方にとっては「いずれ通る道」であり、症状の有無にかかわらず、加齢とともに水晶体は少しずつ濁っていきます。

参考:白内障|日本眼科学会による病気の解説

若くても発症することがあるケース

40代より前であっても、白内障が出ることがあります。
糖尿病で血糖コントロールが不十分な方、ステロイド薬を長期に使用している方、強度近視の方、過去に目の外傷やアトピー性皮膚炎の影響を受けた方は、加齢を待たずに水晶体が濁ることがあります。
30〜40代で「眼鏡を作り直しても見え方が安定しない」「夜の光がにじむ」と感じる場合、年齢のせいだけと決めずに一度眼科で水晶体を確認しておくと、原因をはっきりさせられます。

自覚がなくても進んでいることがある

白内障は水晶体の周辺から濁ることが多く、中心まで濁りが進むまでは自覚症状がほとんど出ません。
会社や自治体の健診で「視力低下を指摘された」「免許更新の視力検査で引っかかった」というかたちで気づかれることもよくあります。
50代を過ぎたら、症状の有無にかかわらず数年に一度の眼科受診を生活に組み込んでおくと、初期のうちに見つけやすくなります。

白内障の初期症状の段階で進行を遅らせるためにできること

白内障の濁りそのものを点眼薬で透明に戻すことはできませんが、初期の段階であれば進行を遅らせる目的で点眼薬を使用することができます。あわせて生活習慣を整えることで、進行のスピードを抑えやすくなります。

点眼薬で進行を遅らせる

初期の白内障に対しては、ピレノキシンやグルタチオンといった成分を含む点眼薬が用いられます。
これは水晶体内のたんぱく質の変性を抑える目的のもので、すでに濁ってしまった部分を元に戻す薬ではありません。
「進行のスピードをゆるやかにする」ためのもので、効き方には個人差があります。

点眼を始めても見え方の改善が大きくない理由はこの仕組みによるもので、効果を感じにくいからといって自己判断で中断せず、定期検査で水晶体の状態を確認しながら継続するか判断していくのが基本です。

紫外線対策で水晶体を守る

水晶体の濁りには紫外線が関わっており、長年の紫外線の蓄積が老人性白内障の進行を後押しするため、屋外では紫外線カット機能のあるサングラスやつばのある帽子で目を守ることが、進行予防として現実的です。
サングラスは色の濃さよりUVカット機能の表示で選ぶこと、レンズが大きく目の周りまで覆えるタイプのほうが横から入る紫外線を防ぎやすいことを、選ぶ際の目安にしてください。

全身の健康管理が水晶体に影響する

糖尿病や喫煙、肥満は白内障の進行を早める要因として知られています。
特に糖尿病は若い年代で白内障を進めることがあるため、血糖値を主治医と連携してコントロールすることが、目の老化を遅らせることにつながります。バランスのとれた食事と適度な運動、禁煙といった一般的な健康管理が、水晶体の状態にも反映されると考えていただいて差し支えありません。

参考:白内障と手術 | 公益社団法人日本眼科医会

白内障の初期症状に関するよくある質問

白内障の初期症状はどのくらいの期間で進行しますか?

進行のスピードには個人差が大きく、年単位でゆっくり進む方もいれば、数ヶ月単位で見え方が変わる方もいらっしゃいます。一般に皮質白内障や核白内障は緩やかに、後嚢下白内障や糖尿病性白内障は比較的速く進む傾向があります。
半年に一度程度の眼科受診で水晶体の状態を記録しておくと、ご自身の進み方のペースを把握しやすくなります。

白内障の初期症状は自然に治ることはありますか?

水晶体の濁りはたんぱく質の変性によるもので、自然に元の透明な状態に戻ることはありません。
ただし、初期の段階では点眼薬で進行をゆるやかにすることが期待でき、生活への支障が出ないまま長く維持できる方もいらっしゃいます。「治す」ではなく「進行をゆっくりにして、見え方の質を保つ」という考え方が、初期段階での治療の目的になります。

初期の白内障でも手術はしたほうがいいですか?

初期で日常生活に支障がない段階では、すぐに手術が必要になるわけではありません。
手術を考えるのは、視力低下や羞明によって運転・読書・仕事などに不便が出てきたときが目安
です。
一方で、後嚢下白内障のように進行が速いタイプや、糖尿病・強度近視を併発している場合は、初期でも早めに手術を検討するケースがあります。

「いつ手術するか」はご自身の生活の不便さと医師の所見の両面から判断します。

まとめ

白内障の初期症状は、視力の数字よりも先に「かすみ」「まぶしさ」「単眼で二重に見える」「眼鏡が合わない」という見え方の質の変化として現れます。老眼や眼精疲労と似ているため自己判断で見過ごしやすいのですが、休めば戻るかどうか、片目ずつでどう見えるかを観察すると、白内障側の特徴が浮かび上がります。

初期の段階であれば、点眼薬で進行をゆるやかにする選択肢があり、紫外線対策や全身の健康管理を組み合わせることで、見え方の質を長く保ちやすくなります。ご自身の見え方に違和感を覚えたら、眼鏡店で度数を変える前に、まず眼科での水晶体の確認を選んでください。

武田眼科では、初期の経過観察から、進行した場合の日帰り白内障手術まで一貫して対応しています。初期の段階から診察を受けておくと、その後の進行のペースや治療を始めるタイミングを判断しやすくなります。見え方の変化に気づいた段階でお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

武田眼科
院長 武田俊彦

地域の皆さんの少しでもお役に立てるよう努力します。
患者さまの目線で病気を見つめ、わかりやすい言葉でご説明することを大切にしています。

■ 経歴

  • 平成14年4月:関西医科大学眼科 入局
  • 平成15年5月:日本赤十字社和歌山医療センター眼科 勤務
  • 平成17年10月:関西医科大学滝井病院眼科 勤務
  • 平成18年4月:関西医科大学滝井病院救命救急センター 勤務
  • 平成19年8月:医療法人慈眼会 武田眼科 院長就任
  • 平成19年9月〜12月:天理よろづ相談所病院 非常勤医師

■ 資格・認定

  • 眼科専門医

【白内障手術および多焦点眼内レンズに関する重要事項】

白内障手術自体は健康保険が適用されますが、多焦点眼内レンズを選択する場合の追加部分は自由診療または選定療養の対象となり、保険診療と自費が併用されます。

  • 治療内容:濁った水晶体を超音波で取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術。単焦点眼内レンズは保険適用、多焦点眼内レンズは選定療養または自由診療
  • 治療期間・回数:両眼で2回(片眼ずつ実施)。所要時間は片眼10〜20分程度(個人差あり)
  • 費用の目安:単焦点眼内レンズによる手術は健康保険適用。多焦点眼内レンズを選択した場合は別途追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
  • リスク・副作用:感染症、後発白内障、眼内炎、術後の見え方の違和感、ハロー・グレアなど