白内障の予防で目指せること・生活習慣で進行を遅らせる方法

目次
白内障の予防について調べると「サングラス」「抗酸化食品」といった対策が並びますが、80歳代になると9割以上の方に水晶体の濁りが見つかるという事実は意外と知られていません。
加齢が原因の大半を占める病気である以上、予防できるのは「発症や進行を遅らせること」までです。
この前提を踏まえたうえで、生活のなかで実際にできること、
そして予防の延長線上にある「早期発見の仕組み」までを順にご説明します。
白内障は完全には予防できない病気である
「予防」という言葉を使うとき、多くの方は「ならないようにする」という意味で受け取られます。
ただし白内障に関しては、その前提を一度横に置いて読み進めていただいたほうが、その後の判断がしやすくなります。
加齢が原因の大半を占める
白内障は水晶体が白く濁ることで視界がかすむ病気です。
厚生労働省の調査によると、水晶体の濁りがある方の割合は50歳代で37〜54%、60歳代で66〜83%、
70歳代で84〜97%、80歳代ではほぼ100%に達します。
年齢を重ねるほど、誰の目にも少しずつ起きる変化と考えてよいものです。
水晶体の主な成分はクリスタリンというたんぱく質で、
長年にわたり光や酸化のダメージを受け続けるなかで少しずつ変性し、透明性を失っていきます。
一度変性したたんぱく質を元に戻す方法は現時点ではなく、
これが「白内障そのものを薬で治すことはできない」と説明される理由です。
それでも「予防」を考える意味
完全に防げないなら予防策に意味はないのか、と感じられるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
白内障の予防で現実的に取り組めるのは、加齢以外で白内障を早めてしまう要因を、
生活のなかでできるだけ減らすことです。
加齢による水晶体の変化を薬や生活習慣で確実に遅らせる方法は、現時点では確立されていません。
一方、紫外線・喫煙・糖尿病・ステロイド薬の長期使用などは加齢以外で白内障を早める要因として知られており、これらに対処することは、加齢以外の負担を上乗せしないという意味で続ける価値があります。
同時に、これらの取り組みは緑内障や糖尿病網膜症など他の眼疾患、生活習慣病の予防にもつながります。
次の章ではその具体的な要因から見ていきます。
白内障の発症・進行を早める要因
加齢以外で白内障を早める要因は、研究や臨床の場で繰り返し指摘されているものがいくつかあります。
それぞれが水晶体に与える負担の質が違うため、「どこに気をつけるか」を選びやすいよう、4つに分けてご説明します。
紫外線
紫外線は皮膚だけでなく目にも届き、水晶体のたんぱく質を変性させる原因の1つです。
屋外で紫外線を浴びる時間が長い方ほど、水晶体の周辺が濁る「皮質白内障」を起こしやすい傾向があります。
スキー場や海辺など反射光が強い環境で目を保護せずに過ごしてきた方は、特に意識しておきたい要因です。
漁業・農業・建設業など屋外で長時間過ごす仕事を長年続けてきた方は、年齢のわりに白内障が早く現れることがあります。
こうした環境にある方ほど、日常的な紫外線対策の意味は大きくなります。
喫煙
たばこの煙に含まれる有害物質は血流を通じて水晶体まで届き、
酸化ストレスを増やすことで白内障の発症や進行を早めます。
喫煙経験のある方は加齢性白内障のリスクが喫煙経験のない方の約1.4倍、
特に水晶体の中央が濁る「核白内障」では約1.7倍にまでリスクが高まります。
参考:Smoking and Risk of Age-Related Cataract: A Meta-Analysis(IOVS)
糖尿病
糖尿病があると、目の水晶体に糖の代謝産物が蓄積しやすくなり、白内障の発症が早まります。
糖尿病のある方は、健康な方と比べて白内障の発症リスクが約2倍高くなるというデータもあります。
なかでも水晶体の周辺が濁る「皮質白内障」と、後ろ側が濁る「後嚢下白内障」を起こしやすい傾向があります。
血糖コントロールが不十分な状態が長く続くほど、若い年齢でも水晶体の濁りが進む可能性があります。
糖尿病の治療を受けている方にとって、血糖管理は全身の合併症対策であると同時に、
目の老化を遅らせる対策でもあります。
参考:Meta-analysis of the risk of cataract in type 2 diabetes(BMC Ophthalmology, 2014)
ステロイド薬の長期使用
アトピー性皮膚炎・喘息・自己免疫疾患などで、ステロイド薬を長期間使用している方は注意が必要です。
ステロイドが原因で起こる白内障は、加齢性のものに比べて進行が速いケースがあります。
水晶体の後ろ側が濁る「後嚢下白内障」というタイプを起こしやすいのが特徴です。
ただし、ステロイド薬は重要な治療薬であり、自己判断で中止することは避けてください。
代わりにできるのは、眼科での定期的な検査によって白内障の発症を早めに把握しておくことです。
視力が落ちる前から濁りの兆候は確認できるため、主治医と眼科医の間で情報を共有しながら治療を続けるのが現実的な対応になります。
今日から取り組める白内障の予防法
ここまでに挙げた要因のうち、生活のなかで自分で対処できるものを具体的にご説明します。
完璧を目指す必要はなく、続けやすい形で取り入れることが第一です。
紫外線をしっかり遮る
紫外線対策の基本は、サングラスとつばの広い帽子の併用です。
夏場だけでなく一年を通して帽子・サングラス・コンタクトレンズで目を保護することが、白内障予防の柱となります。
サングラス選びでは、色の濃さよりUVカット機能の表示を優先します。
濃い色のレンズは瞳孔を開かせるため、紫外線カット機能のないものは逆に目に入る紫外線量を増やしてしまいます。
「UV400」や「紫外線透過率1.0%以下」などの表示を確認するようにします。
レンズの色は、視界のコントラストが落ちにくいブラウン系・グレー系が日常使いには合わせやすい色味です。
帽子は太陽が高い時間帯に有効で、サングラスは朝夕に太陽が低い位置にあるときほど活躍します。
夏場だけでなく一年を通して、屋外に出る習慣に紫外線対策を組み込むことが、長期的な負担を減らすうえで現実的な選択になります。
曇りの日でも紫外線は地表に届くため、日差しの強さで判断しすぎないことも大切です。
抗酸化作用のある食事を心がける
水晶体の老化は酸化ストレスと深く関わっており、抗酸化作用のあるビタミンを多く含む野菜や果物を毎日摂取して酸化ストレスを解消することが、白内障予防の食事となります。
具体的には、ビタミンCはブロッコリー・ピーマン・いちご・キウイなど、ビタミンEはアーモンド・かぼちゃ・アボカドなど、ルテインとゼアキサンチンはほうれん草・ケール・卵黄・かぼちゃなどの緑黄色野菜に多く含まれます。
サプリメントに頼らずとも、緑黄色野菜と果物を毎日少しずつ取り入れる食習慣で、必要量はおおむね確保できます。
白内障に効く特定の食材はありません。糖尿病や高血圧の予防に良い食事が、そのまま白内障の予防にもなります。
禁煙する・喫煙量を減らす
前章で触れた通り、禁煙は目にとっても明確な意味を持ちます。
禁煙年数が長いほど白内障による手術リスクは下がり、20年以上前にやめた方では現役喫煙者と比べてリスクが約4分の3まで下がるというデータも報告されています。
「今さら遅いのでは」と感じる方もいますが、目に限らず喫煙は全身の血管にも影響するため、何歳から始めても禁煙の意味はあります。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来の活用も選択肢に入れてください。健康保険が適用される条件もあり、内科や呼吸器科で相談できます。
参考:Smoking cessation and risk of age-related cataract in men(PubMed)
血糖値・血圧を管理する
糖尿病と白内障の関連を踏まえると、健康診断で指摘された血糖値・HbA1cの数値を放置しないことは、目への負担を増やさないうえで欠かせない取り組みです。
同様に高血圧も水晶体への栄養を運ぶ毛細血管に影響するため、血圧管理は間接的に白内障予防の一部になります。
すでに糖尿病の治療を受けている方の場合、内科での血糖管理に加えて、眼科では糖尿病網膜症の検査と合わせて水晶体の状態を確認しましょう。
「内科だけ」「眼科だけ」ではなく、両方で目の状態を見守る体制を作ると、進行のサインを早めに捉えやすくなります。
白内障の予防に目薬は効くのか
「予防のために目薬を出してもらえないか」というご相談をいただくことがありますが、市販の目薬で白内障を予防したり進行を止めたりすることはできません。
眼科で処方されるピレノキシン製剤やグルタチオン製剤の点眼薬は、初期の老人性白内障の進行抑制を目的とした薬剤です。
効果は限定的であり、白く濁ったたんぱく質を透明に戻す作用はありません。
あくまで「これ以上の進行をゆるやかにする」ための補助的な手段で、視力が低下したあとの治療は手術が前提になります。
「目薬を続けていれば手術は不要になる」と考えてしまうと、本来手術で見え方を取り戻せるタイミングを逃してしまうことがあります。点眼薬は使うとしても、視力やかすみの変化を定期的にチェックし、生活に支障が出てきたら手術を検討するという2段階の見方を持っておくのが現実的です。
白内障の早期発見につながるセルフチェックと定期検診
ここまでの予防策はすべて「進行を遅らせる」ためのものでした。
一方で、進行が始まったときに早く気づける仕組みを持っておくことも、予防と同じくらい大切な備えです。
自分でできる初期サインの確認
白内障の初期症状は人によって感じ方が違いますが、典型的なサインはいくつか決まっています。
- かすみ:視界全体に薄い膜がかかったように感じる
- 羞明(しゅうめい):明るい場所や対向車のヘッドライトが以前よりまぶしい
- 単眼での見え方の違和感:片目ずつ見ると左右で見え方が違う
- 近視化:老眼で遠くが見えにくかった方が、急に近くだけ見やすくなる
こうしたサインのうち「片目ずつで見え方が違う」「夜の運転でまぶしさを強く感じるようになった」は、
白内障の進行を疑う比較的わかりやすい合図です。
月に一度ほど、片目ずつ手で覆って遠くと近くを見比べる習慣を作っておくと、変化に気づきやすくなります。
何歳から眼科での定期検査が必要か
セルフチェックは入口にすぎず、初期の濁りはご本人が気づく前に眼科の検査で見つかることが多くあります。
40代以降は1〜2年に1回、60代以降は1年に1回を目安に眼科で目の状態を確認しておくのが、白内障に限らず緑内障や糖尿病網膜症の早期発見にもつながります。
特に以下に当てはまる方は、自覚症状がなくても早めに眼科とつながっておくほうが安心です。
- 糖尿病・高血圧の治療を受けている方
- ステロイド薬を長期間使用している方
- 屋外での労働歴が長い方
- 家族に若くして白内障の手術を受けた方がいる方
予防の取り組みと定期検診はセットで考えていただくと、いざ進行したときも、
ご自身の生活への影響が小さい段階で次の一手を選べます。
白内障予防に関するよくある質問
白内障の予防は何歳から始めればよい?
紫外線対策と禁煙については年齢を問わず早く始めるほど効果が積み上がりやすい一方、食事や定期検診といった具体的な予防習慣を意識し始めるなら、40代がひとつの目安です。50代になると有病率が大きく上がり始めるため、その前から下地を作っておくと自覚症状が出る時期を遅らせやすくなります。
ブルーライトカットメガネは白内障予防になる?
ブルーライトと白内障の因果関係を示す確かな根拠は現時点では限られており、ブルーライトカット単独で白内障予防効果を期待することは難しいのが実情です。
一方、UVカット機能の付いたメガネは、屋外での紫外線対策としては意味があります。
屋内のパソコン作業のためのメガネと、屋外で紫外線を防ぐためのサングラスは、別の道具として使い分けるのが有効です。
サプリメントで白内障を予防できる?
ルテイン・ビタミンC・ビタミンEなどのサプリメントが、白内障の発症や進行を確実に防ぐと言える根拠はまだありません。
食事から抗酸化栄養素が十分に取れている方が追加で摂取しても、
それ以上の予防効果を得られるかははっきりしていません。
普段の食事で緑黄色野菜と果物が不足しがちな方の補完として活用する程度に留めるのが、現時点では妥当な使い方です。
まとめ
白内障の予防は「ならないようにする」ではなく「加齢以外で白内障を早めてしまう要因を、生活のなかでできるだけ増やさない」と考えるのが実情に合っています。
加齢を止めることはできない一方で、紫外線・喫煙・糖尿病・ステロイドといった早めてしまう要因への対策と、抗酸化を意識した食事・血糖管理は、それぞれが小さくても積み重ねで意味を持つ取り組みです。
そして予防の延長線にあるのが定期検診です。ご自身では気づきにくい初期の濁りを早めに把握できれば、進行に応じて生活への影響が小さい段階で次の一手を選べます。
武田眼科では、精密な視機能検査と、進行した場合の白内障手術まで一貫して対応しています。
「最近かすみが気になる」「健康診断で目のことを指摘された」という段階から、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
武田眼科
院長 武田俊彦
地域の皆さんの少しでもお役に立てるよう努力します。
患者さまの目線で病気を見つめ、わかりやすい言葉でご説明することを大切にしています。
■ 経歴
- 平成14年4月:関西医科大学眼科 入局
- 平成15年5月:日本赤十字社和歌山医療センター眼科 勤務
- 平成17年10月:関西医科大学滝井病院眼科 勤務
- 平成18年4月:関西医科大学滝井病院救命救急センター 勤務
- 平成19年8月:医療法人慈眼会 武田眼科 院長就任
- 平成19年9月〜12月:天理よろづ相談所病院 非常勤医師
■ 資格・認定
- 眼科専門医
【白内障手術および多焦点眼内レンズに関する重要事項】
白内障手術自体は健康保険が適用されますが、多焦点眼内レンズを選択する場合の追加部分は自由診療または選定療養の対象となり、保険診療と自費が併用されます。
- 治療内容:濁った水晶体を超音波で取り除き、人工の眼内レンズを挿入する手術。単焦点眼内レンズは保険適用、多焦点眼内レンズは選定療養または自由診療
- 治療期間・回数:両眼で2回(片眼ずつ実施)。所要時間は片眼10〜20分程度(個人差あり)
- 費用の目安:単焦点眼内レンズによる手術は健康保険適用。多焦点眼内レンズを選択した場合は別途追加費用が発生します。詳しくはクリニックへお問い合わせください
- リスク・副作用:感染症、後発白内障、眼内炎、術後の見え方の違和感、ハロー・グレアなど

