オルソケラトロジーで失明する可能性は?
考えられるリスクと対策

目次
オルソケラトロジーは、夜間に専用レンズを装用することで日中の裸眼視力を得られる近視矯正法として注目されています。
一方で、失明のリスクが気になり、不安を感じている方もいるでしょう。
この記事では、オルソケラトロジーの仕組みや失明リスクの有無、リスクを避けるためのポイントについて、
最新の知見をもとにわかりやすく解説します。
オルソケラトロジーとは?

オルソケラトロジーは、夜寝ている間に専用のハードコンタクトレンズを装用し、
角膜の形を一時的に変えることで軽度~中等程度の近視や乱視を矯正する方法です。
レンズには特殊なカーブが施されており、就寝中に角膜の表面をやさしく整えることで、
朝レンズを外したあとも日中は裸眼で過ごせる状態が続きます。
手術を受ける必要がなく、レンズの装用をやめれば角膜の形は元に戻るため始めやすいのが特徴です。
また、子どもから大人まで幅広い年齢層で利用でき、特に成長期の子どもでは近視の進行を抑える効果も期待されています。
オルソケラトロジーで失明するリスクはある?

オルソケラトロジーは、夜間に専用レンズを装用することで日中の裸眼視力を得られる治療法ですが、
「失明のリスクがあるのでは?」と心配される方もいます。
ここでは、どのような場合にリスクが高まるのか、また実際に失明に至るケースがどれくらいあるのかを解説します。
装用による失明の主な原因は角膜感染症と角膜内皮障害
オルソケラトロジーで失明につながる主なリスクは、「角膜感染症」と「角膜内皮障害」です。
角膜感染症は、レンズの取り扱いや衛生管理が不十分なときに発生しやすくなります。
目に細菌やアカントアメーバなどの微生物が侵入すると、角膜が炎症を起こし、視力に悪影響を及ぼすことがあります。
一方、角膜内皮障害は、角膜の内側にある細胞がダメージを受ける状態です。
長期間の装用や不適切なレンズの使い方が関係していると考えられています。
こうしたトラブルを避けるためには、レンズの装用スケジュールやケア方法を守ることや、
体調・生活環境の変化に注意が必要です。
失明に至るケースは稀
オルソケラトロジーが原因で失明に至るケースは、極めて稀です。
国内外の報告を見ても、重大な視力障害に発展するほどの感染症や障害はごく少数で、
多くの場合、初期の違和感や痛みに気づいて眼科を受診し、早期治療が行われているためです。
ただし、リスクをゼロにすることはできません。
レンズの装用を続ける中で、「目やにが増えた」「痛みがある」「視界がぼやける」といった変化を感じたら、
自己判断せず眼科を受診することが大切です。
定期的な検診を受けながら、医師の指導に従って正しく使うことが、トラブルを防ぐポイントになります。
オルソケラトロジーでリスクを引き起こす要因

オルソケラトロジーは、使い方や管理方法によっては目のトラブルを招くこともあります。
どのような要因がリスクにつながるのかを見ていきましょう。
レンズケア不足
レンズの洗浄や保存が不十分だと、目に悪影響を及ぼすことがあります。
特に気をつけたいのが、レンズ表面に付着する細菌やアカントアメーバといった微生物です。
細菌やアカントアメーバといった微生物は、水道水や手指の汚れから入り込むこともあるため、
レンズの洗浄液や保存液の使い方、洗浄手順をしっかり守りましょう。
また、レンズケースを長期間使い続けるのもリスク要因の一つです。
ケース内部にも汚れが溜まりやすく、気づかないうちに菌が繁殖してしまう恐れもあります。
使い方に慣れてきた頃こそ、「まぁいっか」と手を抜かないことが、トラブルを避けるコツです。
定期検診の不足
オルソケラトロジーを始めたあとも、定期的な眼科での検診は欠かせません。
目の状態やレンズの適合具合は時間の経過とともに変化することがあり、自分では異変に気づきにくいケースもあります。
検診を怠ると、角膜の傷や炎症、レンズの不適合などのトラブルを見逃しやすくなり、
症状が進行してから気づくことにもつながります。
特に装用を始めたばかりの時期や成長期の子どもは変化が出やすいため、
定期検診を受けないまま使用を続けることがないように注意しましょう。
不適切な使用
オルソケラトロジーのリスクは、使用方法を間違えることでも高まります。
例えば、装用時間を自己判断で延ばしたり、
装用禁止とされている風邪や目の異常があるときに無理に使ったりするなどが挙げられます。
また、自分に合っていないレンズを無理に使い続けたり、
しばらく装用を中止してから再開するときに眼科を受診せずに再装用したりするのもトラブルのもとです。
オルソケラトロジーは医師の診察と調整を前提にした医療用レンズなので、
「ちょっとくらいなら大丈夫」と思わず、指導された使い方を守るようにしましょう。
オルソケラトロジーのリスクを抑えて利用するためには?

オルソケラトロジーを使ううえでリスクを抑えるためには、いくつかのポイントをしっかり押さえることが大切です。
特に、以下の点に注意しましょう。
- レンズは毎日きちんと洗浄する
- 定められた方法で保管する
- 水道水でレンズをすすがず、専用のケア用品を使う
- 目に違和感があるときや体調がすぐれないときは無理に装用しない
- 異常があれば早めに眼科を受診する
- 定期検診を忘れずに受ける
自覚症状がなくても、目の状態が変化していることがあります。
日々のケアと定期的なチェックを心がけることで、トラブルの予防につながります。
オルソケラトロジーのメリットとデメリット

オルソケラトロジーは、眼鏡や日中のコンタクトに頼らない生活が目指せる一方で、気をつけたい点もあります。
ここでは、そのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
オルソケラトロジーには、さまざまな利点があります。主なメリットは次の通りです。
- 日中に裸眼で過ごせる
- スポーツやアウトドアの際に眼鏡が邪魔にならない
- 就寝中に装用が完了するため、日中にコンタクトレンズを装用したときのような乾燥感や異物感が少ない
- 特に成長期の子どもにおいて近視進行抑制効果が期待できる
- 必要に応じて使用を中断すれば、角膜の形は元に戻る
日常生活のさまざまなシーンで快適さを感じられる点が特徴です。
デメリット
一方で、オルソケラトロジーには注意すべき点もあります。
主なデメリットは以下の通りです。
- 毎日のレンズケアが必要で、取り扱いを怠ると目のトラブルにつながることがある
- 慣れるまで違和感を覚えたり、寝つきが悪くなる場合がある
- 効果には個人差があり、期待したほどの視力変化が得られないこともある
- 日中の視力が安定しないケースがある
- 定期的な眼科でのチェックが必要で、スケジュール管理が苦手な方には手間に感じることがある
オルソケラトロジーを続けるには日々のケアや通院など、日頃の管理が求められます。
オルソケラトロジーとコンタクトの違い

オルソケラトロジーと一般的なコンタクトレンズは、どちらも視力を矯正するための方法ですが、
使い方や仕組み、適応できる範囲などにさまざまな違いがあります。
ここでは、それぞれの特徴や選び方のポイントについて、具体的に比較しながら解説します。
装用タイミング
一番わかりやすい違いは、レンズを使う時間帯です。
- オルソケラトロジー:夜寝ている間に専用のハードレンズをつけて、朝になったら外す
- コンタクトレンズ:日中、活動している時間に装用する
日中は裸眼で過ごすことを目指すため、眼鏡やコンタクトをつけなくてもよくなる可能性があります。
そのため、学校や職場でレンズの取り扱いが難しい人や、
スポーツ中のレンズ装用を避けたい人にとっては便利に感じられるでしょう。
ただし、夜間装用が前提なので、睡眠時間が短いと効果が出にくい可能性もあります。
視力矯正の仕組み
オルソケラトロジーとコンタクトレンズは、視力矯正の仕組みも異なります。
- オルソケラトロジー:レンズの形状を利用して角膜の形をやや平らに変化させることで、
裸眼でも見えるように働きかける - コンタクトレンズ:目の上に乗せて光の屈折を変えることで装用中の視界をクリアにする
オルソケラトロジーによる変化は一時的なもので、レンズの使用をやめると元に戻っていきます。
そのため、継続して使うことが前提です。
どちらもメリット・デメリットがありますが、日中の見え方をどう確保したいかで選び方が変わってきます。
適応範囲
オルソケラトロジーと一般的なコンタクトレンズでは、適応できる視力や目の状態にも違いがあります。
- オルソケラトロジー:軽度~中等度の近視・乱視
- コンタクトレンズ:近視・遠視・乱視に対応可能
オルソケラトロジーは、角膜の状態によっては処方が難しいケースもあり、事前の検査がとても大事になります。
どちらが合っているかは、目の状態をチェックしたうえで医師と相談して決めるのが良いでしょう。
失明リスクはどちらも非常に稀
どちらも医療用の視力矯正手段であり、使い方を誤ると目のトラブルにつながる可能性があります。
オルソケラトロジーにもコンタクトにも共通するリスクが角膜感染症です。
特にレンズのケアが不十分だったり、目に違和感があるのに装用を続けたりすると、
炎症や障害を引き起こす恐れがあります。
ただし、失明に至るような重篤なケースはどちらも非常に稀です。
大切なのは、定期的に眼科でチェックを受けること、そして毎日のレンズケアを丁寧に行うことです。
ルールを守って使用することで、トラブルのリスクを減らしながら視力矯正に取り組めるでしょう。
オルソケラトロジーがおすすめな人とは?

オルソケラトロジーは、日中の眼鏡やコンタクトが煩わしい人にとって、魅力的な選択肢です。
ここでは、具体的にどのような人に向いているかについて解説します。
子どもの近視進行を抑えたい保護者
子どもの近視が低年齢化・進行傾向にあるといわれています。
そうした中で、オルソケラトロジーは、医師の管理のもとで近視進行抑制を目的に使われることが多い治療法です。
特に、眼鏡や日中のコンタクトにストレスを感じやすいお子さんにとって、
寝ている間だけの装用で日中裸眼で過ごせる点は、負担軽減につながります。
また、学校生活や習い事の中で眼鏡を気にせずに過ごしたいという子どもにとっても、
生活スタイルに合わせやすい方法といえるでしょう。
定期検診やケアの管理は必要ですが、保護者がしっかりサポートし、
家庭で習慣化できれば、前向きに取り入れやすい選択肢となります。
スポーツやアウトドア活動を楽しみたい人
日中、アクティブに動き回る人にとって、眼鏡やコンタクトの取り扱いは少し面倒に感じることもあります。
オルソケラトロジーは、夜間の装用だけで視力矯正を目指すため、日中は裸眼で自由に活動しやすくなります。
特に、激しく動くスポーツや水に触れる機会が多いレジャーなどでは、
レンズのずれや破損、紛失の心配を減らせるでしょう。
また、コンタクトレンズの乾燥や異物感が気になってしまう人にとっても、
起きている間にレンズを使わないオルソケラトロジーは取り入れやすい選択肢のひとつです。
もちろん、自分の目の状態に合っているかどうかは検査が必要なため、
眼科でしっかり相談してから始めるのがおすすめです。
まとめ
オルソケラトロジーによる失明リスクは非常に稀ですが、
角膜感染症や角膜内皮障害が原因となり失明に至る可能性はゼロではありません。
主に不適切なレンズケアや定期検診の不足が原因のため、
正しい使い方と衛生管理、医師の指導を守ることで失明リスクは大幅に抑えられるでしょう。
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大切な目を守りながら、裸眼で快適な毎日を目指したい方は、ぜひご相談ください。