オルソケラトロジーをやめた理由とは?
仕組みやメリット・中止後の選択肢を解説

目次
オルソケラトロジーは、夜間に専用レンズを装着することで日中裸眼で快適に過ごせる視力矯正法です。
多くのメリットがありますが、一部の方には継続が難しい場合もあります。
この記事では、オルソケラトロジーの仕組みやメリット、中止した場合の影響、
さらにその後の選択肢について詳しく解説します。
オルソケラトロジーの仕組み

オルソケラトロジーは、特殊なハードコンタクトレンズを夜間に装用することで角膜の形状を一時的に整え、
日中は裸眼で過ごせるようにする視力矯正法です。
レンズは、内面に複数のカーブが施されており、中央部分が平らになっています。
この形状により、角膜の中央部を軽く押し、周辺部に細胞を移動させて角膜の屈折率を調整します。
装用を続けることで視力が安定し、近視や軽度の乱視にも対応可能です。
ただし、使用を中止すると角膜は元の形状に戻るため、効果を維持するには継続的な使用が必要です。
特に若い世代や軽度の近視の方に適しており、近視進行抑制効果も期待されています。
手術不要で簡単に使用できるため、幅広い年齢層に利用されていますが、医師の指導のもと定期的な検診が必要です。
オルソケラトロジーをやめた理由とは?

オルソケラトロジーは、裸眼で快適に過ごせる視力矯正法として人気ですが、続けることが難しいと感じる方もいます。
ここでは、主な理由を解説します。
レンズ装着の継続が必要
オルソケラトロジーは、毎晩レンズを装着して角膜の形状を矯正し、日中の裸眼視力を維持する治療法です。
ただ、この「毎晩装着」という条件が負担に感じる方も少なくありません。
忙しい日々や旅行でレンズを装着できない日が続くと、矯正効果が失われることがあり、
装着時間が短かったり不規則な生活を送っている場合には、視力が安定せず見え方に影響することもあります。
レンズのケアや定期的な通院も必要になるため、これらの手間を煩わしいと感じ、
治療を中断する理由になることがあります。
オルソケラトロジーは効果を維持するために習慣化が求められる点がデメリットとして挙げられるでしょう。
経済的負担
オルソケラトロジーを続ける上で、費用面の負担が理由となりやめる方もいます。
初期費用には専用レンズ代や定期検診代が含まれますが、
それに加えてレンズの買い替えやケア用品の購入、継続的な検査費用などが必要です。
特に子どもの近視抑制目的で利用する場合、長期間にわたる費用負担を考えると、
家計への影響を懸念する家庭も少なくありません。
また、通常の眼鏡やコンタクトレンズと比較して経済的なメリットを感じられない場合、
他の視力矯正方法へ切り替えるケースもあります。
日常生活との相性
オルソケラトロジーは、一定時間の睡眠中にレンズを装着して効果を発揮する治療法です。
ただ、この仕組みが日常生活と合わないと感じる方も少なくありません。
例えば、夜勤や不規則な生活リズムでは十分な睡眠時間を確保できず、矯正効果が安定しないことがあります。
スポーツや趣味で目に負担がかかる活動を頻繁に行う場合も、
レンズ装用中の違和感や目への影響が気になることがあります。
また、車の運転中にハローやグレア(光のにじみやぎらつき)が発生し、日常生活に影響を与える場合もあります。
ライフスタイルや活動内容によってはオルソケラトロジーが適応しづらい場合があり、
その結果治療を中断する選択をする方もいるようです。
強度の近視や乱視は矯正が難しい
オルソケラトロジーは、軽度から中等度の近視や乱視を対象とした治療法であり、
強度の近視や乱視には適応が難しい場合があります。
一般的に、近視は-4.0Dまで、乱視は-1.5D以下が矯正可能な範囲で、
この範囲を超える場合、レンズによる角膜矯正効果が十分に得られないケースが多いです。
また、角膜の形状や柔軟性によっても効果に差が出るため、
強度近視や乱視の方は適応検査で不適応と判断されることがあります。
強度近視や乱視の方は、ICL(眼内コンタクトレンズ)やRLE(屈折矯正レンズ交換)など、他の矯正方法を選ぶ方もいます。
オルソケラトロジーをやめた場合の影響

オルソケラトロジーを中止すると、角膜形状や視力が元に戻るなどいくつかの影響があります。
ここでは、具体的な変化とそのメカニズムを解説します。
角膜は中止後2週間~1ヶ月程度で元に戻る
オルソケラトロジーをやめると、角膜は自然に元の形状に戻ります。
これはレンズによる矯正が「角膜上皮」という表面の細胞層に限定されており、
細胞の新陳代謝(ターンオーバー)によって元の状態に復元されるためです。
個人差はありますが、多くの場合2週間~1ヶ月程度で矯正前の角膜形状に戻ります。
長期間使用していた方でも、数日間は矯正効果が残るケースがありますが、根本的には完全に元に戻る仕組みです。
例えば、1年ほど装用していた方が中止した場合、最初の1週間は裸眼視力が維持されるケースもありますが、
その後は徐々に効果が減退します。
このような可逆性が、手術ではないオルソケラトロジーの特徴の一つです。
元の近視度数に戻る
オルソケラトロジーを中止すると、角膜形状が元に戻るのに伴い、視力も治療前の近視度数に戻ります。
例えば、-3.0Dの近視が裸眼で0.8まで改善していた場合、中止後は再び-3.0Dに近い状態になります。
角膜上皮の新陳代謝によって矯正効果が失われるためで、眼鏡やコンタクトレンズでの補正が必要です。
回復速度には個人差があり、完全に元の度数に戻るまで最大1ヶ月かかるケースもあります。
ただし、短期的に裸眼視力が維持される場合もあり、最初の数日間は変化を感じにくい方もいます。
いずれにせよ、最終的には治療前の状態に戻るため、日常生活では再び視力補助器具が欠かせません。
近視進行抑制効果が失われる
オルソケラトロジーをやめると、近視の進行を抑える効果もなくなります。
特に子どもの場合、装用中は眼軸(眼球の奥行き)の伸びを抑えることで近視の進行を遅らせますが、
中止後は再び近視が進む可能性があります。
例えば、1年間オルソケラトロジーを使用していた子どもが治療をやめた場合、
眼軸の伸びが通常のペースに戻り、近視が進むこともあるようです。
ただし、治療期間中に得られた抑制効果そのものは残るため、
何もしなかった場合よりは進行が緩やかになることもあります。
近視進行抑制を継続したい場合、低濃度アトロピン点眼や屋外活動の増加など他の方法との併用が検討されます。
オルソケラトロジーは「装用中のみ」効果が持続するため、近視抑制には継続的な使用が重要です。
オルソケラトロジーはやめても再開できる?

オルソケラトロジーは角膜を手術せず、レンズの装用だけで矯正するため、一度やめた後でも、再び治療が可能です。
再開する際は、医師が角膜の状態や視力の変化を確認したうえで、適切な治療を再開します。
具体的には、再開前に「角膜の形状や厚み」「視力の変化」を検査して、適切なレンズデザインを再調整します。
例えば、装用を中断した後に近視が進行した場合、
元のレンズでは十分な矯正効果が得られない可能性もあるため、再開前に必ず医師とのカウンセリングが必要です。
再開に必要な費用は、初回と同様に専用レンズ代や検診費がかかりますが、
以前使っていたレンズが適合する場合、追加費用を抑えることも可能です。
重要なのは、再開前に角膜の健康状態を確認することです。
装用中止後に角膜炎など合併症が生じた場合、治療を再開する前に十分な治療が必要です。
オルソケラトロジー中止後の選択肢

オルソケラトロジーをやめた後も、視力矯正の選択肢は複数あります。
まず、最も一般的なのは眼鏡や通常のコンタクトレンズを再び使用する方法です。
手軽で費用も比較的安価なため、多くの方が選択しています。
次に、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)といった手術による矯正も検討できますが、
手術にはリスクが伴うため、慎重な検討が必要です。
また、近視進行抑制を目的としていた場合には、低濃度アトロピン点眼に切り替える選択肢もあります。
特に子どもの近視進行を抑えたい場合に有効とされています。
どの方法を選ぶにしても、医師との相談を通じて自分に合った選択肢を見つけることが大切です。
オルソケラトロジーのメリット

オルソケラトロジーは、夜間に専用レンズを装着するだけで日中を裸眼で過ごせる視力矯正法です。
手術不要で近視進行抑制効果も期待できるため、幅広い年齢層に支持されています。
日中裸眼で過ごせる
オルソケラトロジーの最大のメリットは、日中に眼鏡やコンタクトレンズが不要になる点です。
夜間にレンズを装着して寝るだけで、翌朝から裸眼で快適に過ごせます。
スポーツや水泳など眼鏡が邪魔になる活動もストレスフリーで楽しむことが可能です。
特に子どもの場合、学校生活や部活動で視力補助器具の煩わしさから解放されるメリットは大きいでしょう。
手術を伴わない
オルソケラトロジーは手術を必要としないため、身体への負担が少ない治療法です。
レンズの装用をやめれば角膜が元の形状に戻る可逆性があり、レーシックのような永続的なリスクを避けられます。
また、感染症や合併症のリスクが低く、眼科医の定期検診を受けながら安全に使用できます。
手術が不安な方や将来的なライフスタイルの変化を考えている方にも適しています。
子どもや若年層は近視の進行を抑える効果が期待できる
子どもの近視進行抑制に効果的とされている点も大きなメリットです。
装用中は眼軸(眼球の奥行き)の伸びを抑える働きがあり、近視の悪化を遅らせる効果が期待できます。
日本眼光学学会の研究『オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼液の併用による近視進行予防』では、
オルソケラトロジー単独での近視進行抑制率は平均43%というデータもあります。
成長期の近視進行抑制に有効な手段として、多くの眼科で推奨されています。
軽度の乱視にも対応可能
オルソケラトロジーは、近視だけでなく軽度の角膜乱視にも矯正効果が期待できる治療法です。
特殊なレンズが角膜表面を平坦化することで、乱視による光の屈折異常をある程度改善します。
一般的には、乱視度数が-1.50D以下の軽度乱視が対象となり、矯正効果が得られることが多いです。
ただし、強度乱視や不正乱視の場合は矯正が難しく、適応外となるケースもあります。
また、目の中の水晶体による乱視はオルソケラトロジーでは治療できません。
そのため、事前に適応検査を受けて、自分の目の状態に合った治療法かどうか確認することが重要です。
オルソケラトロジー継続を検討するポイント

オルソケラトロジーを続けるかどうかを判断する際には、
自分の生活スタイルや目の健康状態に合っているかをよく考えることが大切です。
以下の3つのポイントを基準に検討してみましょう。
- 医師との相談で安全性について納得できているか
- 経済的な余裕があるか
- 日常生活で無理なく続けられるか
定期的な検診で角膜の健康状態を確認し、治療を継続できることが前提です。
また、初期費用や定期検診、レンズ交換などの費用が継続的に発生します。
長期的なコストを考慮して判断することが重要です。
毎晩のレンズ装用やケアが必要なため、生活リズムや習慣に適応できるかも確認しましょう。
条件を満たしている場合、オルソケラトロジーは日中裸眼で快適に過ごせる便利な治療法です。
一方で、負担が大きいと感じる場合は、他の視力矯正方法も検討してみると良いでしょう。
まとめ
オルソケラトロジーを中止する理由として、毎晩のレンズ装用やケアが負担になること、
費用の継続的な負担、生活リズムとの相性、強度の近視や乱視には効果が得られにくいことが挙げられます。
ただし、これらは個人の状況によるもので、適切に使用すれば日中裸眼で快適に過ごせることや、
手術を伴わない安全性など、多くのメリットがあります。
医療法人慈眼会 武田眼科では、オルソケラトロジーの適応検査から治療中止後のサポートまで幅広く対応し、
専門医が丁寧に診療します。
オルソケラトロジーの継続が難しい場合でも、眼鏡やコンタクトレンズ、
低濃度アトロピン点眼など他の矯正方法を含めて患者さん一人ひとりに適した選択肢をご提案します。
手術による近視矯正に抵抗がある方や、
眼鏡やコンタクトレンズが煩わしい方はぜひ 医療法人慈眼会 武田眼科にご相談ください。