白内障手術のリスクやデメリットとは?
安全性や対策を解説

目次
白内障手術は、濁った視界をクリアにする効果的な治療法ですが、すべての医療行為と同様にリスクが伴います。
リスクについて理解し、安全性向上のための対策を講じることが大切です。
この記事では、手術の安全性や具体的な合併症、リスク軽減のための対策をわかりやすく解説します。
白内障手術とは?

白内障手術は、目の中でレンズの役割を果たしている「水晶体」が濁ることで視力が低下する白内障を治療するための外科的手術です。
手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の「眼内レンズ」を挿入します。
手術は短時間で済むことが多く、日帰りで受けられるケースも増えています。
白内障手術の安全性
白内障手術は、医療技術の進歩により短時間で済み、小さな切開によって患者さんへの負担が軽減されています。
また、使用される眼内レンズは耐久性が高く、一度挿入すれば基本的に交換する必要がありません。
ただし、すべての医療行為にはリスクが伴います。
白内障手術の場合、稀に以下のような合併症が発生することがあります。
- 細菌性眼内炎:手術後数日以内に発症する可能性があり、早期治療が必要
- 後発白内障:水晶体摘出時に残った細胞が増殖し、視界がかすむ。レーザー治療で改善可能
- 眼内レンズのズレ:稀に挿入したレンズがズレることがある
リスクを抑えるためには、医師との十分な相談や適切な術後ケアが重要です。
また、自分に合った眼内レンズを選ぶことで、より快適な視力回復を目指せます。
白内障手術のメリット・デメリット

白内障手術は視力を改善し、生活の質を向上させるための有効な治療法ですが、
いくつかのメリットとデメリットがあります。
メリットは以下の通りです。
- 明るくクリアな視界を取り戻せる
- 近視や遠視、乱視を矯正できる
- 白内障そのものは再発しない
- 他の疾患の早期発見につながる
デメリットは以下の通りです。
- ピント調整能力がなくなり、眼内レンズによる補正が必要
- 稀に感染症や眼内レンズのズレなどの合併症が発生することがある
- 眼内レンズの度数がわずかに合わない場合がある
手術を検討する際は、医師と十分に相談し、メリットとデメリットを理解したうえで、
自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
白内障手術のリスクと合併症

白内障手術は視力改善に効果的ですが、すべての医療行為と同様に一定のリスクがあります。
主な合併症として角膜の透明性低下や感染症などが挙げられ、発生頻度は低いものの適切な対応が必要です。
ここでは特に注意すべき7つのリスクを解説します。
水晶体嚢や支持組織の損傷:水晶体を支える部分が損傷する
白内障手術では、水晶体を包む薄い膜「水晶体嚢(すいしょうたいのう)」や、
水晶体を支えるチン小帯(紐のような組織)を傷けてしまうことがあります。
手術中に水晶体を取り除く際に起こる可能性があり、発生率は約1%と低いですが、注意が必要です。
もし損傷が起きると、眼内レンズを正しい位置に固定できなくなる恐れがあります。
損傷が起きた場合、以下のような対応が必要になることがあります。
- レンズの縫い付け:眼内レンズを安定させるために追加の処置を行う
- 硝子体手術:水晶体が奥に落ちてしまった場合は硝子体を取り除く手術をする
- 経過観察:網膜剥離などの合併症が起きないか様子を見る
特に加齢や糖尿病でチン小帯が弱っている方はリスクが高まります。
術前にしっかり検査をして、手術方法を調整するとリスクを減らせます。
駆逐性出血:目の中での突然の出血
駆逐性出血は、白内障手術中や直後に目の奥(脈絡膜)で突発的に出血が起こる稀な合併症です。
発生率は約0.19%と低いですが、視神経を圧迫して失明リスクがあるため注意が必要です。
主な原因には、高血圧や動脈硬化、手術中の急な眼圧変化などが挙げられます。
また、患者さんが手術中に力んでしまうこともリスクを高める要因です。
出血が起きると、目の痛みや急激な視力低下が現れます。
すぐに創口を縫合して出血を止め、必要に応じて再手術で視力の回復を目指します。
リスクを減らすためには、術前から全身状態をしっかり管理し、リラックスして手術を受けることが大切です。
眼内炎:術後に細菌や真菌の感染による炎症
眼内炎は、白内障手術後に細菌や真菌が目の中に入り、炎症を起こす非常に稀な感染症です。
急性眼内炎は手術後3日から1週間以内に発症し、視力低下や強い痛み、充血などの症状が現れます。
適切な治療が遅れると失明につながる可能性もあるため、注意が必要です。
予防として、術前から抗生剤点眼を行い、手術時には徹底した消毒や滅菌を実施します。
また、術後も抗菌薬を使用しながら感染リスクを低減します。
それでも完全な予防は難しいため、術後に異常を感じた場合はすぐに受診することが大切です。
早期発見・早期治療が視力を守る鍵となりますので、医師の指示に従い定期検診を受けましょう。
眼圧上昇:目の内部に圧力が高まる
白内障手術の後に、目の中の圧力(眼圧)が一時的に高くなることがあります。
手術中に使うゼリー状の物質が目の中に残り、目の水分(房水)がうまく流れなくなることが原因です。
ほとんどの場合は数日で自然に治りますが、眼圧が高い状態が続くと視神経に負担をかける恐れがあります。
眼圧が上がると、目が痛く感じたり、頭痛や吐き気を伴ったりする場合があります。
特に緑内障をもっている人や術後の炎症が強い人は、リスクが高くなる可能性があるため注意が必要です。
眼圧を下げる目薬や飲み薬を使ったり、必要に応じて点滴で圧力を下げる治療を行います。
術後は定期的な検査で眼圧をチェックすることが大切です。
もし違和感や痛みを感じたら早めに医師に相談してください。
飛蚊症:視界に黒い点や線が浮かんで見える
白内障手術後に「黒い点や糸くずのようなものが見える」と感じることがあります。
手術で濁った水晶体を取り除いたことで目に入る光が増え、
もともと存在していた硝子体の濁りが目立つようになるためです。
硝子体は加齢でゼリー状から液状に変化し、コラーゲンの繊維が浮かんで影として見えます。
ほとんどの場合は生理的な現象で、時間とともに気にならなくなることが多いです。
ただし、以下のような変化があった場合は要注意です。
- 急に数が増えた:網膜剥離の前兆の可能性
- 視野が欠ける:網膜の異常が疑われる
- 光がチカチカする:硝子体が網膜を引っ張っているサイン
気になる症状があれば早めに眼科を受診し、眼底検査を受けましょう。
老化による生理的な飛蚊症自体を治す治療法はありませんが、重大な病気の早期発見につながります。
水疱性角膜症:角膜にむくみや水ぶくれができる
角膜の内側にある「内皮細胞」は、角膜の水分を調節するポンプのような役割を担っています。
白内障手術では、内皮細胞が術中の刺激で減少する可能性があり、
密度が1㎟あたり500個を下回ると「水疱(すいほう)性角膜症」を発症するリスクが高まります。
水疱性角膜症になると角膜がむくんで透明性が失われ、視界がかすんだり痛みを感じたりします。
予防策として、術前検査で内皮細胞の数や白内障の進行度、視力や生活への影響、全身の健康状態をチェックし、
手術が適切かどうかを総合的に判断します。
特に白内障が進行しているほど手術時の負担が増えるため、早期治療が勧められる場合もあります。
もし発症した場合は、角膜移植(DSAEK)が必要になるため、術前からリスク管理をしっかり行うことが重要です。
後発白内障:レンズ周辺が濁って霞んで見える
後発白内障は、白内障手術後に眼内レンズを包んでいる水晶体嚢(袋)の一部が濁ることで、
視力が低下したり、目がかすんで見える状態を指します。
白内障の再発ではなく、手術後に残った水晶体細胞が増殖して濁りを引き起こすものです。
症状はゆっくり進行することが多く、「物がぼやけて見える」「光がまぶしく感じる」と感じる方が多いです。
治療にはYAGレーザーを使用し、濁った部分を取り除きます。
レーザー治療は外来で行え、痛みもなく数分で終了します。
術後は視力が回復し、通常の生活にすぐ戻れますが、
稀に眼圧上昇や網膜剥離などの合併症が起こる場合もあるため、経過観察が重要です。
白内障手術が失敗することはある?

白内障手術は短時間で済み、小さな切開によって患者さんへの負担が軽減された治療法ですが、
稀に「失敗」と感じられるケースがあります。主な要因は以下の2つです。
- 眼内レンズの度数ズレ
- 合併症の発生
術前検査で想定した度数と実際の見え方に差が生じることがあります。
度数のズレは、検査精度やレンズ選定の影響によるもので、小さいズレならレーザー矯正で修正可能です。
手術自体の技術的な失敗による失明は、ほぼありません。
術後に違和感があっても、多くは経過観察や追加処置で対応可能です。
気になる症状があればすぐに受診しましょう。
白内障手術のリスクを軽減するための対策

白内障手術のリスクを完全にゼロにすることはできません。
手術をより安心して受けるためには、医師や施設の選び方、術前・術後のケアが重要です。
ここでは具体的な対策を紹介します。
経験豊富な医師による手術を受ける
白内障手術の成功率を高めるためには、経験豊富な医師による手術を受けることが大切です。
熟練した医師は、手術中に起こり得るトラブルへの対応力が高く、合併症のリスク軽減につながります。
また、患者さんごとの目の状態やライフスタイルに合わせた眼内レンズの選定も適切に行ってくれます。
医師の技量はクリニックや病院の実績から確認できるので、事前に調べてみましょう。
さらに、医師との相談で手術内容やリスクについて納得してから進めると、不安を減らして治療を受けられるでしょう。
安全性を高める機器が導入されている病院を選ぶ
安全性を高めるためには、使用される機器の導入状況や設備の充実度も確認すると良いでしょう。
例えば、「センチュリオンビジョンシステム」といった高機能な白内障手術装置は、
眼内圧を自動で調整しながら水晶体を効率よく砕く機能があり、合併症リスクを低減できます。
また、空気中の微粒子や細菌を徹底的に取り除いた清潔な環境の手術室を採用し、
手術中の感染症予防に力を入れているかも重要なポイントです。
適切な術前・術後ケアを行う
白内障手術後のトラブルを防ぐには、術前・術後のケアが欠かせません。
例えば、術前には感染予防のために抗菌点眼薬を使用し、目の状態を整えておくことが重要です。
また、術後は目をこすらない、お酒や激しい運動を控えるなど医師から指示された注意事項を守りましょう。
さらに、定期的な検診で目の状態をチェックし続けることも大切です。
日常生活では紫外線対策や十分な睡眠なども心がけてください。
白内障手術を受ける際の注意点

医師との相談や生活習慣の見直しを通じて、リスクを減らし安心して手術を受けるためのポイントを以下で解説します。
手術前に医師と十分な相談を行う
白内障手術を成功させるには、手術前に医師としっかり相談することが大切です。
まず、自分の目の状態や白内障の進行具合を詳しく診断・説明してもらいます。
以下のポイントを押さえて相談を進めましょう。
- 目の状態の確認
- 眼内レンズの選定
- 持病や薬の情報共有
また、不安な点や疑問があれば遠慮せず質問することが大切です。
納得した上で手術に臨むことで、安心して治療を受けることができます。
医師とのコミュニケーションを密にすることが成功への第一歩です。
医師の指示通りに通院や生活をする
手術後は医師から指示された通院スケジュールや生活習慣を守ることが大切です。
例えば、術後1週間以内は感染症予防のために抗菌点眼薬を使用し、目をこすらないよう注意しましょう。
また、激しい運動や飲酒は控える必要があります。
特に飛蚊症や視界のぼやけなど異常を感じた場合は、早めに受診することが重要です。
定期検診では目の回復状況や合併症の有無を確認できるので、必ず通院してください。
日常生活では紫外線対策としてサングラスを使用したり、十分な睡眠をとることも回復力を高めるポイントです。
まとめ
白内障手術は多くの患者さんに実施されている治療法ですが、稀に合併症が発生する場合があります。
例えば、術後の感染症や眼内レンズのズレ、後発白内障などが挙げられます。
また、眼圧上昇や角膜の透明性低下といったリスクもあり、適切な術前・術後ケアが重要です。
医師との相談を通じて、自分に合った治療計画を立てましょう。
医療法人慈眼会 武田眼科では、「センチュリオンビジョンシステム」や「ActiveSentryハンドピース」といった機器を導入し、安全性の向上に努めています。
また、CLASS1,000~10,000のハイクリーン手術室を採用することで感染症リスクを低減。
さらに、低濃度笑気ガス麻酔を使用し、患者さんがリラックスして手術を受けられる環境を整えています。
白内障手術に不安をお持ちの方はぜひご相談ください。