白内障手術後のぼやける症状を防ぐには?
原因から治療・予防まで解説

目次
白内障手術後に「視界がぼやける」と感じることは珍しくありません。
手術による目の変化や回復過程で一時的に起こることもあれば、後発白内障や合併症が原因の場合もあります。
この記事では、ぼやける症状の原因を詳しく解説し、適切な対処法や予防のポイントについても紹介します。
手術後の視力回復をスムーズに進めるためには、医師の指示に従ったケアが欠かせません。
気になる症状を早めに改善し、クリアな視界を取り戻すためのヒントをぜひ参考にしてください。
白内障手術後に「ぼやける」症状とは?

白内障手術後、視界がかすんで見えたり、
青みがかった色合いを感じたりといった「ぼやける」症状が起こることがあります。
また、飛蚊症といって黒い点や線が視界に浮かぶように見える場合もあります。
これまで気づかなかった硝子体の濁りが鮮明な視界で認識されやすくなるためです。
さらに、手術後は目の角膜や結膜が安定するまで、ゴロゴロした異物感を覚えることもあります。
これらの症状は多くの場合、一時的で時間とともに改善します。
ただし、気になる場合は医師に相談しましょう。
白内障手術後にぼやける原因

白内障手術後に視界がぼやける主な原因は、目の回復過程やドライアイ、後発白内障などが考えられます。
一時的な症状が多いですが、合併症が隠れている場合もあるため注意が必要です。
ここでは、それぞれの原因について解説します。
目の回復過程
白内障手術後の目の回復過程では、
目が新しい状態に慣れるまでに時間がかかるケースがあります。
手術直後は角膜が一時的に腫れるため、光の屈折が乱れて視界が波打つように見えたり、
色調が青みがかって感じられることがあります。
これは、濁った水晶体が透明な眼内レンズに替わることで、より多くの光が入るようになった影響です。
また、術後1~2週間は脳がレンズの焦点位置に適応する期間が必要で、この間はものが二重に見えたり、
遠近感が不安定に感じられる場合もあります。
手術時の消毒液や照明の刺激で涙の質が一時的に低下し、目が乾きやすくなることも要因のひとつです。
これらの症状は多くの場合、1ヶ月程度かけて自然に改善していきますが、焦らず経過を観察することが大切です。
ドライアイ
白内障手術後のドライアイは、手術時の影響や点眼薬の作用で涙の量や質が変化すると起こります。
手術中に使う消毒液や照明の刺激が目の表面を傷つけ、術後1~2週間は涙が蒸発しやすい状態が続くことが原因の一つです。
また、術後に処方される非ステロイド系の抗炎症点眼薬には表面麻酔作用があり、涙の分泌を減らす要因になります。
特に術前からドライアイ気味だった方(実に70%が該当)は、症状が強く出やすい傾向があります。
主な症状は以下の通りです。
- 目の乾き
- ゴロゴロ感
- ぼやけ
ドライアイの症状を放置すると、角膜が傷つくリスクがあります。
気になる症状があれば早めに眼科医に相談しましょう。
後発白内障
後発白内障は、手術後に水晶体を包む「後嚢(こうのう)」が濁ることで視界がぼやける現象です。
白内障が再発するわけではなく、眼内レンズを固定した袋に残った細胞が増殖することで起こります。
主な症状は以下の通りです。
- ぼやけ感
- 光のまぶしさ
術後数ヶ月~数年かけて現れることが特徴です。
厚生労働科学研究成果データベースによると、術後5年以内に後発白内障を発症する人は28.4%にのぼり、
若年層ほど発症しやすいとされています。
また、後発白内障を完全に予防することは、現在の医療技術では難しいとされています。
その他の合併症
白内障手術後、まれに眼内レンズのずれや網膜・角膜のトラブルが原因で視界がぼやけることがあります。
例えば、「眼内レンズ脱臼」は、レンズを支えるチン小帯が緩むことで発生し、視界が歪んで見える症状を引き起こします。
また、「黄斑浮腫(おうはんふしゅ)」は網膜の中心部がむくむ状態で、術後数ヶ月かけて視界が霞むことがあります。
さらに、以下のような化膿性の合併症が発生するケースもあります。
- 細菌性眼内炎:術後1週間以内に目の痛みや急激な視力低下を伴う感染症
- 角膜内皮障害:角膜細胞が減少し、かすみや痛みを引き起こす
これらの症状は早期発見と適切な治療で改善可能ですが、放置すると視力に大きな影響を与える可能性があります。
術後に異常を感じた場合は、速やかに主治医へ相談しましょう。
白内障手術後のぼやける症状への対処法

白内障手術後のかすみやぼやけは、多くの場合が一時的な症状です。
目薬や休息で改善されることが多いですが、後発白内障や合併症が原因の場合は適切な治療が必要になります。
ここでは、それぞれの状況に応じた対処法をご紹介します。
一時的な症状:目薬・十分な休養
手術直後のぼやけは、角膜のむくみや眼内レンズへの適応期間によるものがほとんどです。
処方される抗炎症・抗菌作用のある目薬を決められた回数さすことで、1~2週間かけて自然に改善していきます。
特に「フロメフ」や「ジクアス」といった点眼薬は、目の乾燥を防ぎながら回復を促す効果が期待できます。
目を酷使するスマホ操作や読書は控え、睡眠を十分にとることが大切です。
まぶしさを感じる場合はUVカット眼鏡を使用し、入浴時はシャワー温度を低めに設定するなど、
目への刺激を減らしましょう。
症状が1ヶ月以上続く場合は、主治医に相談してください。
後発白内障:レーザー治療で濁った部分を除去
手術後数ヶ月~数年経って現れるぼやけは、後発白内障の可能性が高いです。
後発白内障の場合、YAGレーザーで濁った水晶体嚢に穴を開ける処置を行います。
治療は5分程度で完了し、痛みもなく、当日から普段通りの生活が可能です。
レーザー後は一時的に飛蚊症が増えることがありますが、1週間ほどで落ち着きます。
再発率は1%未満と低く、根本的な解決法として有効といえます。
合併症の場合
以下の症状が現れたら、速やかに受診が必要です。
- 黄斑浮腫:抗VEGF薬の注射やステロイド点眼で改善
- 眼内レンズ脱臼:レンズを固定する再手術が必要
- 細菌性眼内炎:抗菌薬の投与や硝子体手術を緊急実施
特に「急激な視力低下」や「目の激痛」がある場合は、24時間以内の対応が重要になります。
術後1週間は感染リスクが高いため、処方された目薬を自己判断で中止せず、検診を必ず受けましょう。
白内障手術後のぼやけを防ぐためのポイント

白内障手術後の視界のぼやけを防ぐには、術後のケアがとても重要です。
医師の指示に従い、適切な点眼薬の使用や生活習慣の見直しを行うことで、回復をスムーズに進めることができます。
ここでは、具体的なポイントをご紹介します。
医師から処方された点眼薬を正しく使用する
術後に処方される点眼薬は、感染予防や炎症を抑えるために欠かせません。
決められた回数とタイミングで使用することで、目の回復を助けます。
例えば、抗菌薬は細菌感染を防ぎ、抗炎症薬は腫れや痛みを軽減する効果があります。
自己判断で使用を中止したり、回数を減らすと治療効果が十分に得られず、合併症につながる可能性があります。
また、点眼時は手を清潔に保ち、目薬の容器が目に触れないよう注意してください。
もし点眼後に違和感や副作用が現れた場合は、すぐに医師へ相談しましょう。
術後検診を欠かさず受ける
術後検診は目の状態を確認し、異常がないか早期発見するために必要です。
特に手術直後は感染症や炎症が起こりやすいため、医師による定期的なチェックが欠かせません。
検診では視力の回復状況や眼内レンズの位置なども確認されるため、自覚症状がなくても必ず受診しましょう。
検診時には気になる症状(ぼやけ感や痛みなど)を詳しく伝えることが大切です。
また、術後1週間以内は特にリスクが高いため、この期間中は予定を調整して検診を優先しましょう。
早期対応ができれば、大きなトラブルを未然に防げます。
強い光から目を守るためにサングラスを着用する
白内障手術後は目が光に敏感になることがあります。
そのため、外出時にはUVカット機能付きのサングラスを着用して紫外線や強い光から目を守りましょう。
紫外線は角膜や網膜への負担となり、炎症やぼやけ感を悪化させる可能性があります。
室内でも蛍光灯や画面から発せられる強い光が気になる場合は、ブルーライトカット機能付き眼鏡を活用すると良いです。
また、日差しが強い時間帯(午前10時~午後2時)の外出は避けるなど工夫するとさらに安心です。
サングラス選びではフィット感も重要なので、自分の顔に合ったものを選びましょう。
飲酒や喫煙は控える
白内障手術後の回復を妨げる可能性があるため、飲酒や喫煙は控えることが大切です。
アルコールは血流を変化させ、目の炎症を悪化させる要因となるほか、傷口の治癒力を低下させる恐れがあります。
検診時には気になる症状(ぼやけ感や痛みなど)を詳しく伝えることが大切です。
喫煙は血管を収縮させ、目への酸素供給が不足することで合併症のリスクを高めます。
また、タバコの煙自体が目に刺激を与え、不快感や乾燥感につながる可能性もあるため注意しましょう。
術後1ヶ月程度は飲酒・喫煙とも控えることがおすすめです。
この期間中に健康的な生活習慣を心掛けることで、視力回復への良い影響が期待できます。
不安な点があれば医師へ相談しながら無理なく取り組むと良いでしょう。
白内障手術についてのよくある質問(Q&A)

白内障手術は視力を改善するための一般的な治療ですが、術後の経過や合併症について不安を抱える方も多いです。
ここでは、よくある質問に対してわかりやすくお答えします。
Q1:手術後どれくらいで視界が安定しますか?
白内障手術後の視界が安定するまでには個人差がありますが、通常は数日から1週間程度で改善を感じる方が多いです。
ただし、目が完全に回復し、視界が安定するまでには約1ヶ月かかることがあります。
これは角膜のむくみや眼内レンズへの適応期間が関係しています。
手術直後は視界がぼやけたり、光に敏感になったりすることがありますが、
処方された点眼薬を適切に使用し、目を休めましょう。
また、スマホやパソコンの長時間使用を避けるなど、目を酷使しない生活習慣も重要です。
もし1ヶ月以上経っても改善が見られない場合は、医師に相談してください。
Q2:後発白内障は予防できますか?
後発白内障は水晶体嚢に残った細胞が増殖して濁りを生じる現象のため、完全な予防は難しいですが、
リスクを減らす方法はいくつかあります。
例えば、特殊な設計の眼内レンズ(後発白内障の発生を抑えるタイプ)を選ぶと発症率を下げることが可能です。
また、術後の定期検診を受けると、早期発見・治療につなげられます。
万一後発白内障が起きた場合でも、YAGレーザー治療によって濁りを除去することが可能です。
後発白内障の治療は短時間で痛みもなく、再発率も低いです。
早めの対応が視力回復につながるため、不安な点は医師に相談しましょう。
まとめ
白内障手術後に視界がぼやける症状は、目が新しい眼内レンズに慣れる過程で起こる一時的な場合が多く、
適切なケアや治療で改善できる場合がほとんどです。
具体的には、角膜のむくみや脳の適応期間によるもの、ドライアイ、後発白内障などが原因として挙げられます。
ただし、症状が長期間続いたり、急激に悪化した場合は合併症の可能性も考えられるため、
早期に医師へ相談し、適切な検査や治療を受けることが重要です。
医療法人慈眼会 武田眼科では、患者さん一人ひとりに合わせた丁寧な診療を行い、
安全で高品質な白内障手術の提供を目指しています。
新しい医療機器を使用し、術後のケアまでしっかりサポートします。
患者さんがリラックスできる環境を整え、クリアな視界を取り戻すお手伝いをしているため、
気になる方はぜひご相談ください。