白内障手術ができない人とは?
断られる理由や適応条件・対策を解説

目次
白内障手術は視界をクリアにする効果的な治療法ですが、全ての方に適しているわけではありません。
健康状態や目の状態、医療機関の設備などによっては手術が難しいケースがあり、『手術できない人』が存在します。
この記事では、手術ができない理由(持病・併発疾患・加齢による影響など)や、対策となる代替治療を解説します。
白内障手術とは?

白内障手術は、視界がぼやける原因となる白内障を治療するための手術です。
ここでは、手術方法や適応条件について詳しく解説します。
濁った水晶体を取り除いて人工のレンズを挿入する
白内障手術は、目の中で濁ってしまった水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入する治療法です。
白内障手術は以下の手順で進められます。
- 麻酔:点眼麻酔を使用して目の周囲を麻痺させる
- 切開:目の表面に小さな切開を作り、水晶体を包む袋(水晶体嚢)に窓を開ける
- 濁った水晶体の除去:超音波装置を使い、水晶体を砕きながら吸引
- 人工レンズの挿入:空になった水晶体嚢の中に人工レンズ(眼内レンズ)を挿入・固定
手術は通常10~30分程度で終了し、痛みはほとんど感じません。
日帰りと入院手術
白内障手術は日帰りで行うケースが一般的ですが、患者さんの体調や希望によっては入院が必要な場合もあります。
- 日帰り手術:当日に病院へ行き、数時間後には帰宅できる
- 入院手術:2~3日間病院で過ごしながら術後の経過観察を行う
日帰りの場合でも付き添いが必要なため、家族や友人に協力してもらうことが大切です。
また、高齢者や遠方から来る患者さんには入院手術が推奨されるケースもあります。
適応条件
白内障手術を受けるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 白内障が原因で、日常生活や仕事に支障をきたしている
- 全身の健康状態が安定している
- 手術内容やリスクについて医師からの説明を理解し、同意できる
- 術後の点眼や通院などの術後ケアに協力できる環境が整っている
条件を満たしている場合に、白内障手術が検討されます。
緑内障や黄斑変性など他の眼疾患を併発している場合、手術効果が期待できないため適応外となるケースもあります。
特に、水晶体を支える組織が弱い高齢者や、白内障が進行し過ぎて超音波での処理が困難な場合は、
専門的な設備を持つ医療機関での対応が必要です。
気になる症状がある方は、早めに眼科医に相談しましょう。
白内障手術ができない人とは?

白内障手術は多くの白内障患者さんにとって視力回復の希望を与える治療法ですが、
全ての方に適しているわけではありません。
健康状態や目の状態など、いくつかの理由で手術が難しい場合があります。
健康状態による制約がある
白内障手術は点眼による局所麻酔で行われるため、全身の健康状態が安定していることが重要です。
以下のような場合には手術が難しくなる可能性があります。
- 心疾患や脳卒中の直後:回復して間もない場合、手術による負担がリスクとなる
- 血圧や糖尿病のコントロールが不十分:高血糖や高血圧は術後の合併症リスクを高める
- 重度の認知症:手術中に医師の指示に従えない場合、手術が安全に行えない可能性がある
これらの場合には、まず持病を安定させることが優先されます。
他の眼疾患を併発している
白内障以外の目の病気を併発している場合、手術が難しくなることがあります。
代表的な例として以下があります。
- 黄斑(おうはん)変性
- 緑内障
- 網膜剥離
- 糖尿病網膜症
黄斑変性や緑内障は、加齢によって発症しやすく、白内障と併発するケースも多いです。
網膜剥離や糖尿病網膜症がある場合、白内障手術による視力回復が期待できない可能性があるため、
専門的な治療を行う眼科医に相談する必要があります。
加齢により水晶体の支えが弱まっている
水晶体は、『チン氏帯』という細い糸状の組織によって、眼球内で適切な位置に留まるように支えられています。
しかし、加齢によってチン氏帯が弱まると、水晶体を支える力が低下し、手術が難しくなる恐れがあります。
チン氏帯が加齢で衰えると手術が難しくなる理由は、以下の4つです。
- 手術中に水晶体がグラつき、人工レンズを安定させられない
- 手術中にチン氏帯が断裂してしまう恐れ
- チン氏帯が断裂すると通常の白内障手術だけでなく特別な処置が必要になる
- チン氏帯が弱いと、人工レンズがずれやすくなる
例えば、85歳以上の患者さんでは、チン氏帯の衰えに加え瞳孔が開きにくいなど複数の要因が重なり、
手術時間が長引くケースも少なくありません。
このように、加齢によるチン氏帯の衰えは手術の難易度を大きく左右します。
白内障が進行しすぎている
白内障が進行しすぎると、白内障手術が難しくなります。
手術が難しくなる主な理由は以下の4つです。
- 水晶体が硬くなる:超音波で砕く際に破片が角膜や水晶体嚢を傷つけるリスク
- 水晶体が肥大化する:大きな切開が必要になる
- 濁りが強くなる:網膜や視神経の状態を確認できず、術後に期待した視力回復が得られない可能性がある
- 特殊な手術方法が必要になる
白内障は早期発見・早期治療が重要です。
進行を防ぐためにも、定期的な眼科検診を受けることをおすすめします。
白内障手術が受けられない理由とその背景

白内障手術は多くの方が受けられる治療法ですが、医療機関の設備や患者さんの状態によっては断られることがあります。
主な理由は、患者さんの健康状態以外にも『クリニック側の対応力不足』があります。
症例数や設備による制約
白内障手術を断られる理由の一つは、医療機関の症例数や設備が不足しているためです。
例えば、以下のようなケースが該当します。
- 特殊な症例への対応経験が少ない
- 高難度手術用の機器がない
- 術前検査の精度不足
黄斑変性や網膜剥離を併発している場合、通常の白内障手術とは異なる技術が必要です。
症例数が少ないクリニックでは、こうした複雑な手術に対応できない可能性があります。
正確な眼内レンズの挿入には、VERION(ベリオン)のような精密な眼内レンズの度数測定ができる機器が欠かせません。
設備が整っていないと、手術後の視力が期待通りにならないリスクがあり、断られる可能性があります。
白内障手術以外の治療法や対策はある?

白内障の進行を遅らせたり、症状を軽減する、白内障手術以外の方法があります。
ここでは薬物療法や視力補助具を活用した対策について解説します。
薬物療法で進行を遅らせる
白内障の初期段階では、点眼薬による水晶体の濁りを防ぎ、
進行を遅らせることを目的とした治療が選択肢となる場合があります。
- ピレノキシン点眼液
- グルタチオン点眼液
ピレノキシン点眼液は、白内障の原因となるキノイド物質の生成を抑え、水晶体の濁り進行を遅らせます。
初期の白内障に効果が期待される薬です。
グルタチオン点眼液は、抗酸化作用をもち、水晶体の透明性を保つ働きがあります。
酸化によるタンパク質変性を防ぐことで、進行抑制が期待されます。
ただし、これらの薬は進行防止が目的であり、濁った水晶体を元に戻すことはできません。
また、効果には個人差があるため、定期的な検査と医師の指導が重要です。
眼鏡やコンタクトレンズを使用する
白内障による視力低下やピント調節困難に対して、眼鏡やコンタクトレンズで補助する方法もあります。
眼鏡やコンタクトレンズなどの補助具は、一時的な対策として有効ですが、
白内障が進行すると十分な効果が得られないこともあるため、症状が悪化する前に適切な治療方針を立てることが重要です。
白内障は手術以外では根本的に治せない

白内障は自然治癒が難しい病気です。
点眼薬や内服薬は進行を遅らせる効果はありますが、濁った水晶体を元に戻すことはできないためです。
紫外線対策や抗酸化作用のある食品(ほうれん草・ブルーベリーなど)の摂取も推奨されますが、
これらは予防や進行スピードを緩める効果しかありません。
サングラスの着用や禁煙が大切だとされるのも、あくまで『濁りを加速させない』ための対策です。
根本治療が必要な理由は、水晶体のたんぱく質が変性してしまうと自然修復できない性質にあるためです。
白内障手術では超音波で濁った水晶体を砕いて吸引し、人工レンズと交換します。
視界をクリアにできますが、進行しすぎると水晶体が硬くなり手術が難しくなるので、
適切なタイミングでの受診が重要です。
眼科医から「そろそろ手術を」と言われたら、
それは視力低下が日常生活に支障をきたす段階に達したサインと捉えましょう。
白内障手術を検討する際の注意点

白内障手術は視力改善に効果的な治療法ですが、
安全性を高め、満足のいく結果を得るためにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
ここでは特に重要な2つの注意点を解説します。
自分の状態について正確に伝える
手術前の問診では、自分の情報を正確に伝えることが大切です。
- 持病や服用中の薬
- 目のトラブル歴
- アレルギーや体質
糖尿病や高血圧がある場合、術後の感染症リスクが高まる可能性があります。
血圧降下剤や抗凝固剤を服用中の場合、手術前に調整が必要です。
過去にレーシックを受けた方や目を強くぶつけた経験がある方は、水晶体を支えるチン氏帯が弱っている可能性があります。
術式の選択に影響するため、必ず申告しましょう。
消毒薬や抗生物質に対するアレルギーがある場合は、事前に医師へ伝えてください。
代替薬を使用するなどの対策が取れます。
例えば、『目をよくこする癖がある』『花粉症で目薬を頻繁に使う』といった些細な情報でも、手術の安全性に影響します。
気になることはメモにまとめておくと安心です。
経験豊富な眼科でセカンドオピニオンを受ける
手術を提案されたら、複数の医療機関で意見を聞くことをおすすめします。
「手術が必要」と言われても、「本当に今が適切なタイミングか」「他の方法はないか」と疑問に思うことは自然です。
別の眼科医の意見を聞くことで、治療の必要性や選択肢を客観的に判断できます。
症例数が多い施設では、過熟白内障やチン氏帯脆弱症例など、複雑な手術にも対応可能です。
現在の目の状態が分かる『眼軸長データ』や『OCT画像』があると、スムーズに相談できます。
かかりつけ医に依頼すれば、データの提供を受けられます。
かかりつけ医へは、「もう一度じっくり考えたいので、セカンドオピニオンを受けたいです」と率直に伝えましょう。
適切な医療機関を紹介してくれるケースも多いです。
紹介状がなくても受け付けている施設がほとんどなので、安心して相談してください。
セカンドオピニオンは『主治医を否定する行為』ではなく、『自分に合った治療を探す権利』です。
納得できる手術を受けるために、積極的に活用しましょう。
まとめ
白内障手術ができない人には、健康状態や目の状態に問題がある場合が含まれます。
例えば、心疾患や糖尿病のコントロールが不十分な場合や、網膜剥離や緑内障などの併発疾患がある場合です。
また、加齢による水晶体を支えるチン氏帯の弱まりや、
白内障が進行しすぎて水晶体が硬化している場合も手術が難しくなることがあります。
医療法人慈眼会 武田眼科では、高性能な機器と豊富な症例実績を活かし、幅広い白内障症例に対応可能です。
特に、超音波乳化吸引装置『センチュリオン』や精密検査機器『VERION(ベリオン)』を使用し、
高精度な手術を提供しています。
また、後発白内障への対応や複雑な症例に対する治療も行っており、患者さん一人ひとりに最適な治療を提案します。
白内障でお悩みの方は、ぜひ 医療法人慈眼会 武田眼科にご相談ください。